2022.04.30
湖国の高校No.1を争うライバル 2人でインハイの頂点をめざす [陸上競技(ハンマー投)] 松園拳真・中林朋大 滋賀学園高校
剛と柔。異なる個性の2人
長年、滋賀学園高校で投擲種目を教えている野木茂樹先生は「まるで正反対」と評す。ハンマー投で県高校1、2位を争う松園拳真と中林朋大の個性の話だ。
「松園はパワーで押し切るタイプ。中林は技巧派。剛と柔と言うのか、これだけ個性が違う2人が滋賀県の高校ナンバー1を競い合っているんやから、ハンマー投というスポーツは奥が深いですね(笑)」
〝剛〞の松園は中学1年の夏から砲丸投を始め、3年の頃には県2位( 11m88)に入る有望選手だった。当然、野木先生も砲丸投の選手として迎え入れたが、松園は「室伏広治さんに憧れていて、中3から自主的にハンマー投の練習をしていた」と打ち明ける。高校1年からハンマー投に転向し、持ち前のパワーでさっそく近畿ユース優勝を成し遂げてみせた。〝剛よく柔を断つ〞ではないが、持って生まれた能力を早々に開花させた。
アテネ五輪金メダルの室伏広治さんに憧れる松園拳真。
一方の中林は〝柔〞である。円盤投とハンマー投の二刀流を今も続けている中林は「円盤の補強の意味合いでハンマーを始めた」という。2つの種目で共通するのは遠心力をパワーに変える技術。「全身をリラックスさせながら、足の運び方や力を加えるタイミングなどでターン速度を高めて、ハンマーを投げます」と独特の感性を磨いてきた。まさに〝柔よく剛を制す〞タイプだ。
決着は高校最後のインハイで
お互いを「ライバル」と言い切る松園と中林。そのきっかけの一つとなったのが昨秋の滋賀県秋季総体だった。ハンマー投は全6投のうち、最長記録の1投で順位が決まる。この日は、中林が5投目まで首位に立っていた。
そして運命の6投目。先に試技を行なった松園が自己新の56m 99で逆転に成功する。「無心になれた。初めてゾーンというものを感じた」という会心の1投だった。
逆転されたことを会場アナウンスで知った中林は「抜き返したいと思った」と集中力を高めてラスト一投に向かった。結果は56m 44。わずかに松園の記録には届かなかったものの、この記録は中林の自己ベストだった。
2人揃って自己新を出せた理由について「普段から切磋琢磨しているから」だと口を揃える。中でも、ハンマーを振り回しながら歩く滋学名物の「スウィング歩行」や、オフシーズンに大学生以上が使用する7・26㎏の重いハンマー(高校は6㎏)で練習を重ねてきたことが飛躍につながったと話す。当然、高校最後の今年はインターハイでの競演をめざしている。
〝剛〞松園は「目標はインハイ優勝です」と力強く言う。〝柔〞中林は「全国制覇と滋賀県高校記録( 64m 54)の更新です」と、さらに高い目標を追加する。バチバチのライバル争いは今夏、いよいよ最終章に突入する。