2023.11.01

滋賀県中学校「棒高跳 練習会」 葉山中学校ほか

棒高跳の入口を広げたい

滋賀には女子棒高跳でオリンピックに出場した選手が2人もいる。
2004年アテネ大会の近藤高代さん(近江高校教諭)と012年ロンドン大会の我孫子智美さん(エール株式会社)だ。
そして〝3人目〞につながる興味深い動きがにわかに進行している。2023年の春からスタートした滋賀県中学校「棒高跳 練習会」がそれだ。

中心メンバーは栗東市立葉山中学校の陸上競技部員たち。
西尾圭介顧問は発足経緯をこう話す。「葉山では今までも棒高跳をやる子はいました。でも、ほかの中学ではほとんどやっていない。理由は棒高跳を知らないからでした。高校から棒高跳を始めた選手の中には、〝葉山中を見て、やってみたいと思っていた〞という例も聞きました。それなら対象を県内の全中学生に広げてみようかと。これが始めたきっかけです」

ちなみに近藤さんが棒高跳を始めたのは大学生。我孫子さんは高校生。もっと早くから競技を始めて感覚を養っていた、どんな選手になっていただろうか。

「挑戦」と「努力」を育てたい

練習会は野洲川運動公園陸上競技場で月3回ほどのペースで開かれる。他種目との掛け持ち選手がほとんどだが、実は棒高跳〝推し〞の選手も意外と多い。1500mとの二足のわらじを履いていた大久保知輝(葉山3年)もその一人だ。

「県内で棒高跳をやっている中学生男子は自分だけ。少し寂しいですが、ポールを立てて自分の体がふっと浮かぶ瞬間が好きで続けてきました。高校でも続けたいです」

また、他種目との相乗効果を感じている選手もいる。熊野奈々美(葉山3年)は走幅跳に良い感触を得られているようだ。

「棒高跳の上方向に踏み込む感覚が走幅跳に共通する部分があります。棒高跳をはじめて走幅跳のリズムがよくなった気がします」

800mで県5位の実力を持つ勝間純鈴(葉山3年)は、逆に棒高跳で才能を開花させた選手だ。
「先生に誘われて棒高跳を始めました。だんだん高く跳べるようになって自己ベストを更新すると、どんどん楽しくなってきました」
取材時の自己ベストは2m 90。目標はU 16陸上( 10月中旬に開催)の入賞予想ラインである3m 20。
「手応えはある」と勝間は話した。

葉山以外の選手も参加

練習会には葉山以外からの参加者も増えた。

能登川中学の今堀凰愛(2年)は「テレビで棒高跳を観て興味を持ちました。想像よりも難しいですが、ふっと宙に浮く感覚が楽しい」と話す。

信楽中学の奥田志乃(2年)は普段は短距離走に取り組んでいるが、マイポールを持参するほど棒高跳に魅せられている。

「始めて6ヵ月ですが、まだマットの上まで跳べません。めっちゃ難しいですが、そこが楽しいところでもあります」。 

棒高跳は陸上競技の中でもかなり難解な部類に入る
。だが、難しいからこそ学びも多いと西尾顧問は話す。「棒高跳というスポーツを通して、いろんなことに挑戦する姿勢やコツコツ積み重ねる大切さなどが学べると思いますし、学んでほしいです。そして、高校でも競技を続けてくれるとうれしい」。

外野の人間はどうしても〝3人目〞のオリンピアンを期待してしまうが、本当の目的は〝学び〞にあるようだ。随時、参加者を募集しているので興味のある方はぜひ。

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