2019.07.26
[野球]佛教大学硬式野球部 福森 建
全国決勝で得た手応えと課題。すべてを“兄超え”につなげる。
「”真っ直ぐ”が強いなら、真っ直ぐ投げたるわ!」
佛教大学の福森建(4年)は、そう思った。 第68回全日本大学野球選手権大会(神宮大会)決勝戦、9回二死満塁のピンチの場面だ。
「明治大学の喜多(真吾)選手が直球を打つのが得意だと聞いていた。だったら、打ってみろと。キャッチャーも気持ちは同じで直球勝負のサインが出ていた」
4回から登板し、9回まで明治打線を無失点に抑えていた。 自負もあった。 だが、福森は喜多に走者一掃の2塁打を浴びて降板してしまう。 一球に泣くとは、まさにこのような場面を言うのだろう。
結局、佛教大学は1-6で敗れて準優勝(初)に終わった。 「最後に甘さが出てしまった」 と福森は悔いる。だが、あの場面で真っ向勝負するのが彼の魅力でもある。
福森が野球を始めたのは信楽中学から。 9歳上の兄・大志さんが石部高校で活躍する姿を見て 「自分も野球をやりたい」 と思った。 水口高校では2年春からベンチ入りしたが、大事な3年の夏にベンチ外に。夏の甲子園予選のマウンドに立たないまま高校生活を終えた。 「正直、適当にやっていても試合には出られると思っていた。 でも、最後に外された。 悔しくて大学で見返してやる!と思った」
福森の課題は気持ちの面だった。そんな折、佛教大学の田原完行監督から 「人として成長してみないかと言われ、心が動いた」 と言う。
その言葉通り 「監督は常に日常生活が野球につながると言われる。選手ではなく人を育てようとされているのがよく分かる」(福森)。 その方針は、自主性を養うための”フリー練習”と呼ばれる時間にも表れている。
「毎日、たとえ1時間でもフリー練習がある。 自分で自分の課題を見つけ、どうすれば克服できるかを考えて実行する時間です。”自主的”なので別にサボってもいい。 でも、試合に出られなくてもそれは自分の責任になる。 この方針のおかげで、考えて野球ができるようになった実感はあります」
大学3年の京滋大学野球連盟 春季リーグで先発を任されるようになった。 以前よりも自分を律した日常生活を送るようになると、秋季リーグでは先発5勝という結果も残せた。 最優秀投手賞にも輝き、プロ野球選手になるという目標も現実味が帯びてきた。
おもしろいのは”プロになる”という目標が、”兄を超える”という目標と同義な点である。
「何事においてもまだ兄を超えられていない。 野球でも、です。先日、実家で兄とキャッチボールしたら自分の球を簡単にキャッチされてしまいましたから…(笑)。 兄からは”プロに入ったら負けを認める”と言われています。 秋の明治神宮大会で今度こそ日本一になって、プロ球団からドラフト指名されるように頑張りたい」
兄の背中を追って野球をはじめた少年が、いよいよ兄超え(プロ入り)なるか。10月のドラフト会議に楽しみが一つ増えた。
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福森 建
佛教大学硬式野球部
Profile/ふくもり・たてる。投手。1997年4月19日生まれ、甲賀市出身。信楽小学校、信楽中学校、水口高校を経て佛教大学へ。現在4年。中学から野球を始め、高校時代は2年春からベンチ入りも3年の夏はベンチ外に。大学では3年の京滋大学野球連盟 春季リーグで先発に抜擢され、秋季リーグでは5勝を挙げてリーグ優勝に貢献。最優秀投手賞にも輝いた。父から言われた「お前は普通に投げたら絶対に打たれない」が自信の源。189㎝、95㎏。