2019.11.02
【対談連載】第6回 三日月大造滋賀県知事 × 西村大介代表
湖国のリーダーが考える理想のカタチ。一人ひとりが“輝ける”滋賀県に。
滋賀レイクスターズ西村大介の対談連載6回目。お相手は滋賀県知事の三日月大造氏。
中学・高校で生徒会の会長を務めた生粋のリーダーは「湖国の感動 未来へつなぐ わたSHIGA輝く国スポ・障スポ 2024(第79回国民スポーツ大会・第24回全国障害者スポーツ大会)」の成功に向けて尽力している。
そんな滋賀の顔に“リーダー”に求められるものは何かを聞いた。
「居てよかった」が幸せな時
〈西村〉早速ですが、スポーツには「する、みる、支える」という3つの関わり方があると思います。個人的には「支えるスポーツ」がもっと楽しかったらいいなと思っています。例えば、滋賀県で開催している「びわ湖レイクサイドマラソン」に、滋賀レイクスターズからもゲームコンダクター(スポーツボランティア)の派遣を行なっています。大会運営のディスカッションを重ねる中で、県職員の方から「参加ランナーが仮装して走れるだけではなく、支える側も仮装しましょう」という提案がありました。給水所にアニメや映画のキャラに扮したスタッフがいたらおもしろいし、支える側も楽しいのではないかと…。
〈三日月〉今年は第10回目の記念大会でしたね。ナースの格好をされたスタッフなど、さまざまに扮した方がいらっしゃったのを私も見かけました。
〈西村〉ボランティアというと、日本人の頭には自己犠牲や我慢というニュアンスがどうしても入ってきます。それを取り払うことを滋賀のスポーツから始められたらいいなと思い、我々はゲームコンダクターの運営をさせていただいています。もちろん、やるべき仕事はしっかりした上で、スタッフ自らが楽しめる仕組みをどうすれば作れるのか。それができれば、もっとハッピーなスポーツになるんじゃないかと思っています。
〈三日月〉ハッピーなスポーツは、ハッピーな空間を作る。楽しみながら支えることができれば、新たな発見や感動も生まれる気がします。そういう発想はどんどん取り入れていきたい。
〈西村〉ハッピーというキーワードが出ましたが、三日月知事にとって幸せを感じるのはどんな時ですか?
〈三日月〉知事という立場ではなく、三日月大造という一個人としては「居てよかった」時です。あなたがここに居てよかったと周りから言われたり、ここに居てよかったと自ら感じられたりした時は、やっぱり幸せを感じます。
リーダーには「愛」が必要
〈西村〉三日月知事は、中学・高校で生徒会の会長をされていたそうですが、昔から周りの幸せ(ハッピー)を考えるような人間だったのでしょうか。私が京都大学アメリカンフットボール部の指導者をしていた頃、選手のリクルーティングをする際に、エースで4番だけじゃダメ、生徒会長、いわゆるリーダーシップを発揮できる人材をスカウトするように話していました。私の理念として、社会をリードする人材の輩出というものがありました。そういう素質のある学生を連れてきて、彼らがより成長できる環境を整えるのが自分にとってのリーダーシップだと思っていました。当時、ずっと生徒会の会長でしたという学生もいましたが、三日月知事はなぜ若い頃からリーダーになったのですか?
〈三日月〉生徒会の活動を始めたきっかけは、自分たちがいる環境を、自分たちが関わってより良くしたいと思ったからです。自分が中心になってやらないといけないという使命感のようなものが、周りの学生たちよりも強かったのかもしれません。でも、実は小学生の頃に落選しているんです(笑)。絶対に勝つと思っていたのに、友人に負けてすごくショックでした。中学1年の時も副会長に立候補して落ちています。それでも、よしやるぞと思ったから中学と高校で生徒会の会長になりました。
〈西村〉なるほど。すごく高い志を感じます。では、リーダーに必要なことは何だと思われますか?
〈三日月〉今は「愛」だと思っています。
〈西村〉「愛」ですか。
〈三日月〉優しさと言ってもいい。痛い、嬉しい、といった多くの感情に共感できること。その感度を研ぎ澄ませておきたいと思っています。
〈西村〉「愛」がリーダーに必要というのは、どういう発想なのですか?
〈三日月〉リーダーは、多くの人と一緒に行動し、その人たちに進むべき方向を指し示すことを求められます。人が動くとは、人の心が動くこと。心を動かしてもらうには、相手が”自分のことを考えてくれている、わかってくれている”ということが大事だと思っています。つまり共感力です。共感力には、いろいろな物差しがあると思いますが、私の場合はそれが「愛」に至ったというわけです。
〈西村〉以前は違ったのですか?
〈三日月〉以前は、先見性や志など勇ましいイメージが頭にありました。オレについてこい的なものがリーダーシップには必要だと考えていました。
〈西村〉では、滋賀県知事としてリーダーシップを発揮する上では、どのようなことを意識されていますか?
〈三日月〉大阪大学の教授などをされていた鷲田清一先生の思想に「しんがりのリーダーシップ」というのがあります。本当は前を歩きたいけれど、そこを我慢して一番後ろから全体を目配りするという考え方です。滋賀県知事としては、それを意識しています。
誰もが「ひと輝き」できる県に
〈西村〉2024年に滋賀で国スポ・障スポが開かれます。”しんがりのリーダー”としてはどんな大会にしたいのでしょうか?
〈三日月〉(大会のノボリを指差して)「輝き」です。最初の話につなげると、やる人もそうですし、みる人も、支える人もみんなが「ひと輝き」できるような大会にしたいと思います。2024年は一つのターゲットイヤーだと思っています。今年のラグビーワールドカップにはじまり、来年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年のワールドマスターズゲームズと続き、日本には”する、みる、支える”というスポーツ文化の機運が高まると思います。それを経て迎える滋賀の国スポ・障スポですので、滋賀のみなさんが参加して「ひと輝き」できるようにしたいと思っています。
〈西村〉なるほど。みんなが何らかの形で参加して輝きましょうと…。
〈三日月〉そうですね。先ほどの「びわ湖レイクサイドマラソン」の話ではないですが、ボランティアの方々が仮装して自ら楽しめるような大会にしたいです。そのためには滋賀レイクスターズさんの力もお貸しいただけたらと思います。私は滋賀レイクスターズの試合を見て、応援したくなりました。その理由の一つに、ダイバーシティ(多様な人材を活用する考え方)があります。いろんな国やチームから選手が滋賀に来てくれて、一緒にパフォーマンスしていく。言葉の壁やスキルの違いがある中で結果を出していけるのは、ダイバーシティがあるからです。これを滋賀県の教育に置き換えることもできる。例えば、学校の勉強は苦手だけどダンスの才能が飛び抜けている子がいたとします。勉強はできないよりはできた方が楽しいので、しなくていいとは言いませんが、ダンスが上手な子にはその部分に光を当てられるような県にしたいと思っています。他人と違っていてもいい、むしろそれを力にできる県でありたい。その象徴なり、トップランナーに滋賀レイクスターズがなってくれれば、僕らももっと一緒にいろんなことができるなと思っています。
〈西村〉ありがとうございます。滋賀レイクスターズでは、バスケットボールチームだけではなく、ゲームコンダクターやシーズンスポーツなど滋賀県のみなさんがスポーツに触れ合う機会を増やせるような活動を積極的に行っています。グッドリーダーはグッドフォロワーであると言われますが、まさに我々は滋賀のグッドリーダーになれるように頑張っていますし、これからもどんどん滋賀を元気に、滋賀を誇りにしていければいいかなと思っています。本日はお忙しい中、ご協力いただきありがとうございました。
三日月大造 |
PROFILE/みかづき・たいぞう。1971年生まれ。滋賀県出身。1994年、一橋大学経済学部卒業後、JR西日本に入社。広島支社にて駅員、電車運転士や営業スタッフなどに従事。JR西労組中央本部青年女性委員長(専従)、JR連合青年・女性委員会議長を務める。2002年、松下政経塾23期生として入塾。2003年、衆議院議員初当選(4期連続当選)。国土交通大臣政務官、国土交通副大臣等を歴任。2014年7月より滋賀県知事に就任。現在2期目。「世界に開かれ、世界とつながり、世界から選ばれる滋賀県」を目指して“健康しが”の創造・発信に取り組む。 |
西村大介 |
PROFILE/にしむら・だいすけ。1977年3月18日生まれ、鳥取県出身。滋賀レイクスターズ代表取締役。京都大学アメリカンフットボール部時代は、1996年甲子園ボウル優勝を経験。社会人時代はオールXリーグ2度受賞し、2003年ワールドカップにも出場。選手引退後は京都大学アメフト部のコーチ、監督を歴任した。代表取締役を務める株式会社G-assistでは国公立大学体育会学生と企業とを結ぶ就職活動支援事業なども展開中。 |