2020.02.07
[書道パフォーマンス]膳所高校書道班
湖国の書道パフォーマンスは2 0 0 5 年に膳所から始まった。
滋賀の書道は元気優先
ガラガラとドアを開けると、ぶわっと墨汁の香りが迫ってくる。部屋をのぞくと、袴姿の高校生たちが立ったまま勢いよく筆を滑らせている。書道パフォーマンスの稽古場は、静かな書道教室とは違い、活気に満ち溢れている。
書道パフォーマンスのルーツは、三島高校(愛媛)書道部によるデモンストレーションに端を発す。2008年には全国高校書道パフォーマンス選手権大会(書道パフォーマンス甲子園)が初開催された。そして、三島高校をモデルにした映画が上映されると、人気は一気に全国へ広がった。
”甲子園”では4m×6mの巨大用紙を使い、12名以内の部員が音楽に合わせて書を完成させていく。ホウキほどの大きな筆を使ったダイナミックなパフォーマンスと、圧倒的な筆圧による作品は壮観だ。
滋賀では、2005年に膳所高校書道班によって書道パフォーマンス文化が始まった。
膳所高校の藤居孝弘顧問(滋賀県書道協会理事・滋賀県書教育研究会理事長)は経緯をこう話す。
「滋賀県書道協会理事長の神田浩先生が膳所高校におられた時に始められました。もともと滋賀の学校書道は、綺麗に整った文字よりも、元気で勢いのある文字を書くことを勧めています。書の楽しさをまず伝えたいからです。そういう意味では、自由に表現する書道パフォーマンスと通ずるところがあったのかもしれません」
現在では、膳所、伊吹、大津などの高校を中心に、書道パフォーマンス文化が花開いている。
活動を通して”人”を磨く
東京オリンピック・パラリンピックイヤーの今年、滋賀の書道パフォーマンス界では興味深い試みが行われる。パラトライアスロン宇田秀生ら湖国ゆかりの選手からメッセージをもらい、そこから文字や文章を連想させ、パフォーマンスで表現するというも。膳所は、パラ競泳の木村敬一選手のメッセージをもとに書を作り上げる。
パフォーマンスリーダーの山本真奈美さん(2年)は説明する。
「木村選手からは”置かれた場所で咲きなさい”という言葉をいただきました。自分が置かれている状況を眺め、その中で何ができるのかを考え、努力することの大切さを表現したメッセージです。そこから連想した文字が”タンポポ”です。このタンポポを軸にさらに連想を深め、文章(小書き)を添えて1枚の作品にしていきます」
お披露目は2月の「びわ湖☆アートフェスティバル」である。
3月には書展「萌芽」を控えている。この「萌芽」は、膳所高校の在校生と卒業生が参加する書展で、運営面をすべて在校生が行う名物行事。班長の土田美那さん(2年)は「人として成長できる機会」だと話す。
「普段から自分だけの線を求めて練習をしています。個を見つめ、自分を表現するようなイメージです。一方で、萌芽は全員が何かしらの役割を持ち、例えば会場の方との打ち合わせ、パンフレットに掲載する広告集め、ポスターを貼らせていただく場所の交渉など学校外の方と接する機会も多い。書と向き合うのとは違う角度から成長できる機会だと思います」
書展「萌芽」でも、書道パフォーマンスを行う予定。この機会に、書の芸術に触れてみてほしい。
膳所高校書道班
Profile/班員13人(2年4人、1年9人)。平日の放課後に活動。全国高等学校総合文化祭や書の甲子園入賞など輝かしい成績を持つ。毎年3月に行われる書展「萌芽」は、在校生および卒業生が日頃の努力を試す場。作品制作はもちろん、広報活動や運営などすべてを学生が行う。