2025.10.30
〝MK4〞で県勢初のインターハイ2冠。 個々のレベルアップで頂点に立つ

U18日本代表・相原の存在
カヌースプリント競技のカヤック男子4人乗り(MK4)で、大津高校がインターハイの頂点に立った。滋賀県勢としては初の快挙。これだけでも充分にニュースなのだが、彼らはなんと200mと500mの2種目で頂点に立った。まさに偉業だ。
てっきり、同じメンバーでずっと漕いできたのかと思ったが、実はMK4を組んだのは今年の春先からだという。
1人乗り(MK1)で「アジアパシフィックスプリントカップ」U 18日本代表の相原 舜(2年)はその理由をこう話す。
「今までは部員が少なく、実力もバラバラだったので組めなかった。でも、昨年くらいから男子カヤックは10人ほどに増え、経験者も多くなった。今年は勝負できるんじゃないかということで組みました」
部の中でダントツに速い相原を軸に、バランスやタイムを参考にメンバーが選ばれた。最初は相原との差が大きかった他の3人だが、各々が猛特訓を重ねた結果、徐々にチームのバランスが取れてきた。5月の春季総体では伝統のある八幡商業に勝ってインターハイ切符を手に入れた。自信をもって全国に挑むことになる。
スタート地点で緊張走る
先に行われた種目は500m。どちらかと言えば200mを得意とする大津高校にとっては緊張感が漂う予選となったが、余力を残した状態で2位通過を果たす。そして同じ日の準決勝では、翌日の決勝を見据えて「一度、全力を出してみる」(相原)余裕も生まれていた。
それでも決勝のスタート地点では「重たい空気が流れた」と上段結一朗(2年)は振り返る。
「〝焦らずに行こう〞と話し合っていました。でも、隣のレーンに年代別日本代表がいるフォアメンがいたこともあって、やっぱり緊張しました。その中で〝スタートから差をつける〞というプラン通りに進められた。レース中盤で追いつかれたけれど、それも想定内。冷静にラスト200mからスパートをかけて一気に差をつけることができました」
結果的に2位とは約1秒差をつけての圧勝劇だった。
「焼肉おごったる」に奮起
長瀬一隼(3年)は500mで優勝した瞬間、涙を抑えることができなかったという。
「このチームの中で自分が一番遅くて足を引っ張ってきたと思います。チームを組むことになった時は、全国優勝なんて本当に実現できるのかと疑う気持ちもありました。でも、しっかりと練習して、みんなで力を合わせて頂点に立つことができた。うれしくて、うれしくて…。500mのレース直後に、もう泣いていました」
その2日後には200mも制して二冠を達成する。キャプテンの今井帆久斗(3年)は「200mの優勝はおまけみたいな感じです。ずっと500mの練習をしていたので。200mも優勝できたら最高やなぁくらいの気持ちで、緊張せずにレースできたのが良かったのかなと思います」と話す。
偉業を成し遂げた4人だが、意外にも最後のひと押しはボランティアコーチとの〝お約束〞だった。今井は「その方から〝メダルを取ったら焼き肉おごったる〞と言われました。それを聞いて〝よし、みんなで焼き肉を食べにいくぞ!〞って盛り上がりました」と打ち明ける。
歴史を塗り替えたサクセスストーリーだが、裏側には学生らしいエピソードもあった

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長瀬一隼・今井帆久斗・上段結一朗・相原 舜
大津高校 カヌー部








