2025.08.20

自分を信じてフリーのアスリートへ。 今年は2度の自己記録更新と躍進。

このままでは終われない

 実業団を退社後フリーで活動して4年目となる山中日菜美が、陸上短距離界で存在感を放っている。4月の織田記念、5月の木南記念と2レース続けて100mの自己記録を更新し、木南記念では自身初の11秒5台をマークした。「考えて努力すれば自己ベスト更新につながるところが面白くて陸上を17年間続けている。まだまだいけるなという思いです」と28歳は自信をのぞかせている。

 身長155㎝ながら持ち前のバネを生かした走りが特長。大津市立志賀中学校、大津商業高校と着実に成長し、立命館大学時代はリレーの日本代表メンバーにも選出された。しかし卒業後に進んだ愛知県内の実業団チームでは3年以上自己ベストが更新できず、苦しい日々を過ごす。「このまま競技をやめたくない」。選手としてありたい姿を見つめ直した結果、退部してフリーで自己ベストを更新すると覚悟を決めた。

 2021年末に滋賀へ帰郷し、通い慣れた立命館大学びわこくさつキャンパスのグラウンドへ週5回通う日々が始まる。すると翌22年秋の全日本実業団選手権には、大学卒業後初の自己ベスト更新となる11秒61をマークした。「当初は学生に付いていけないくらい力が落ちていたが、全日本インカレ優勝をめざす彼女たちのモチベーションに刺激を受けながら、徐々に取り戻すことができました。学生時代は当たり前と思っていた恵まれた環境で再び練習させてもらえたおかげです」。現在は県内外の5社からスポンサー支援も受けて競技に励んでいる。

磨きをかけた2次加速

 さらに今年に入って向上したのが2次加速のスキル。得意のスタートから体が浮き上がらないよう前傾姿勢を保ち、30m付近でトップスピードへとつなぐ。そのイメージに合わせた反復練習や筋力トレーニングが、今季の好記録連発につながった。「特に11秒51を出した木南は走っていて気持ちいいと思える会心のレースでした。織田の走りを木南でも再現できたこと、そしてまだまだ精度を高めていけることに自信を持てました」と笑顔で振り返った。

 好調だっただけに思いが高まり、オーバートレーニングで左脚を痛め7月の日本選手権は昨年に続く決勝進出がかなわなかった。しかし、地元開催の国スポに向けてもう前を向いている。「メンバーに選ばれたら、お世話になってきた方々への思いを胸に走りたい。そして見ている皆さんに走りでかっこいいと思ってもらえたらうれしいです」。飛躍を遂げた年に迎える国スポを心待ちにしている。

山中日菜美

滋賀陸上競技協会

やまなか・ひなみ。1996年12月12日生まれ、大津市出身。志賀中学校の部活動で陸上競技を始め、3年生でJOCジュニアオリンピックカップ200m6位入賞。立命館大学1年のとき全日本インカレ4×100mリレー優勝を経験、卒業後はデンソーに進みその後フリーに。自己ベストは100m11秒51、200m24秒02。SNSやYouTubeでアスリートとしての日常を発信するほか、モデルやインフルエンサーとしても活動している。

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