2024.07.01

水泳とカヌーの〝二刀流〟。しかも国内トップクラス。

カヌースプリントはU18日本代表

 2024年度から「レイクスターズサポートアスリート」に加わった小林生歩(いぶ)の名を聞いて、パラ水泳を思い浮かべた人もいれば、カヌースプリントを連想した方もいるだろう。そう、彼は水泳とカヌーという異色の〝二刀流〞生活を続け、どちらも国内トップクラスのアスリートだからである。

 その名が全国区になったのは、おそらくカヌースプリントが先だろう。中学時代にK2(二人乗り)で全国制覇を果たしているからだ。しかも、ペアを組んだのは同学年で同じチームに所属していた現U23日本代表の中岡誠琉(オーパルオプテックスカヌーチーム/北大津高校3年)。中学時代からトップ選手とペアを組めるだけの実力を持っていたということだ。

 もちろん、小林自身も国内トップクラスだ。2024年3月の海外派遣選考レースを勝ち抜き、U18日本代表として「U18アジアパシフィック スプリントカップ」に出場している。代表はたった4人という狭き門だった。

「(出場できたのは)冬にエルゴマシンなどで筋力トレーニングをしてきたおかげです。でも、カヌーは高校までと決めているので今年が最後です。良い成績で終われるように頑張ります」

パラ水泳は強化指定選手

 そのカヌーよりも先に始めたのが水泳である。「僕に記憶はありませんが…(笑)」と前置きした上で、小林は「お母さんによると、生後6ヵ月でコパン近江八幡のベビースイミングに通っていたみたいです。水泳大会に初めて出たのは小学1年の頃だったと思います」と話す。オーパルオプテックスでカヌースクールに通い始めたのは小学3年生の頃。つまり、二刀流生活は今年で10年目という計算になる。

〝二刀流〞は大会の日程調整や練習時間の確保などの難しさがある。とはいえ、お互いにメリットもあるようだ。「カヌーでは上半身や体幹が鍛えられる。それが水泳では推進力につながっていると感じます」

 小林は100mバタフライや100m自由形などの短距離を得意としている。一概には言えないが、カヌー競技で育んだ筋力が相乗効果を生んでいると言える。そして意外な形で二刀流のメリットが出る。小林があまり得意と思っていない長距離で結果が出たのだ。

 小林はパラ水泳の1500m自由形で2023年度全国ランキング2位に入った。これにより2024年度は日本知的障害者水泳連盟強化指定選手に選ばれている。指導者たちは筋力よりも「カヌーで心肺機能が向上したのではないか」という見解だ。いずれにせよ、強化指定選手に選ばれたことで、小林の前にあった扉は大きく開かれた。

 今年はラストイヤーのカヌーに力を入れるそうだが、その後はパラ水泳でトップをめざす意向だ。
「来年は滋賀県で国スポ・障スポがあります。レイクスターズサポートアスリートに選ばれて、みなさんに応援される喜びを感じられています。こういう経験は初めてですし、自分の名前を知ってもらえるうれしさもある。恩返しではないですけど、今年はカヌーで国体に出て、25年は水泳で滋賀を盛り上げたいです」

 鍛え上げた肉体とは違い、笑顔にはあどけなさが残る高校3年生。二刀流ラストイヤーの活躍を見届けたい。

小林生歩

滋賀友泳会

こばやし・いぶ。2006年12月5日生まれ、近江八幡市出身。滋賀県立愛知高等養護学校3年。特別全国障害者スポーツ大会(鹿児島)25mバタフライ1位(区分26/大会新)、2023ジャパンパラ水泳競技大会100m自由形7位入賞。日本知的障害者水泳連盟 強化指定選手。カヌースプリントでは2024年5月の「U18アジアパシフィック スプリントカップ」に出場。

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