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2021.10.10

創部100年以上の伝統クラブ。 新監督のもと〝再興〟が進む。龍谷大学 硬式野球部

2020年2月、元プロ野球選手の本郷宏樹氏が監督に就任した。
だが、母校再興に乗り出した矢先、コロナ禍という難局に直面する。
限られた活動の中で、いかに改革を進めてきたかを探る。

監督就任後、コロナ禍の世に

9月4日に関西六大学野球の秋季リーグが開幕。大津市の瀬田キャンパスを拠点にする龍谷大学硬式野球部(以後、龍谷)は、2010年以来の秋季リーグ制覇(春季リーグは2014年に優勝)に向けて10月上旬まで熱戦を繰り広げる。

最大の山場は、春秋合わせて5連覇中の大阪商業大学戦(10月1日・2日)。春季リーグで2連敗した王者にリベンジを果たせるかが、龍谷復権のカギになりそうだ。

龍谷の創部は1913年。関西六大学制覇は旧リーグを含め歴代最多29回を誇っている。まさに名門だが、近年は優勝から遠ざかっている。再建に向け、大学が白羽の矢を立てたのが元プロ野球選手でOBの本郷宏樹氏だった。

本郷氏は比叡山高校から龍谷大学へ進み、卒業後はヤクルトスワローズで7年間プレー。2005年10月に引退し、一般企業での職務やびわこ成蹊スポーツ大学勤務を経て、2019年2月に龍谷のコーチに就任。2020年2月に龍谷の新監督となった。

だが、母校再興へ乗り出した矢先、コロナ禍という難局に直面する。「(びわこ成蹊スポーツ大学硬式野球部時代を含め)約10年の指導でいろんな経験をしてきましたが、さすがに(コロナ禍の)こういう経験は初めてで、どう対応していいか悩みました。オンラインミーティングを開いたり、選手の自主トレメニューを考えたり。今もそうですが、難しい部分がたくさんあります」と、この1年半を振り返った。

モットーは選手を観ること

本郷監督が指導者として最も大切にしているのは「観ること」だという。

「長い期間、選手をずっと観ていくと時々変化がみられる。そういう時に声をかけると、選手自身が考えるきっかけにもなる。逆に、そのままでいい時は、そのままでいいと声をかけることも大事だと思っています。それも自分と向き合うきっかけになりますから。しっかり観ることはコミュニケーションの一つだと考えています」

声のかけ方にも特徴がある。〝答え〞ではなく、〝質問〞を投げかけるように話しかけるのだと言う。

「なぜダメだったのか、なぜこの練習をしているのか、そういうことを理解して取り組まないと、同じミスを繰り返しますし、試合本番で失敗します。だから、声をかける時は、なるべく問いかけます。それが結果的に強いチームを作るのだとも思います」

練習中、本郷監督はこまめに移動し、打撃や投球、筋トレなどを行う選手たちを観察する。そして、気になった選手にはその場で声をかける。これが、今の龍谷スタイルのようだ。

滋賀県出身の本郷宏樹監督

選手全員で意見し合う

大津市出身の袖森太陽(2年)は、自分で考える環境の中で成長してきた1人だ。入学早々からコロナ禍で練習が制限された中で、もくもくと自主練をこなし、今年の春季リーグで大学デビューを果たしている。「でも、春は1打席しか立てませんでした。その後は何が足りないのかを考えてきたつもりです。秋はもっとチームの勝利に貢献したい」。練習中、袖森は何度も打撃フォームをチェックしながら、時折、監督と会話を交わしていた。こういう自問自答を1年生から繰り返してきたのだろう。

比叡山高校出身の中澤嶺(2年)は、今年の春季リーグで3勝を挙げるなど、先発ローテーションの1人として活躍した。「龍谷は守備からリズムを作るチーム。練習では1球1球を大切に投げてきました。春は4試合を投げて1つ負けているので、秋は登板した全試合を勝てるようにしたい。自分の投球でいい打線を呼び込めたらうれしい」。秋季リーグに向けて1球の重みを考えてきたのかもしれない。

近江高校出身のキャプテン向井地大(4年)は、本郷氏が来る前と後の変化をこう話してくれた。「僕が2年の時(2019年)に本郷さんがコーチとして龍谷に来られました。それまではミーティングもほとんどなかったのですが、本郷さんが来られてから選手が話し合う機会が増えました。今は、先輩・後輩に関わらず、みんなが意見を出せる雰囲気になっていると思います」

彼らの話を聞いていて、浮かび上がってくる言葉は〝選手の主体性〞だ。それを象徴するようなシーンが全体練習の最後にあった。キャプテン向井をはじめ、上級生たちが率先してグラウンドを整備し、ネットを畳み、ボールを磨いていたのである。

向井は「以前は下級生が後片付けをするのが当たり前でした。でも、本郷監督から〝それでいいの?〞と問われ、上級生で話し合い、部員みんなで片付けるようにしました」と話す。

勝負の世界は勝ち負けが優先されがちだが、龍谷ナインたちはプロセスの重要性を理解しているのかもしれない。100年以上の伝統を誇る龍谷は今、変革の時を迎えている。

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