2021.04.14

“甲賀”仕込みの独自スタイル。 合言葉は「相手の逆を突け」。 A.Z.R(アッズーロ)

全国区へと急成長

 甲賀市を拠点にする「A.Z.R(アッズーロ)」は、元Jリーガーの東崇史代表が2009年に立ち上げたサッカークラブである。10年後の2019年にはJCカップU11全国大会で滋賀県勢初の準優勝に輝き、2020年には全日本U12サッカー選手権大会や地域フットサルチャンピオンズカップ全国決勝大会へ出場するなど、着実にその名を全国にとどろかせてきた。

 特徴は指導者ほぼ全員が甲賀育ちという点。プロ選手を多く輩出している土地柄もあってスキルの高い指導者が多いが、もう一つ共通点があると東代表は言う。

「駆け引きして、相手の逆を突く。そういうイメージが、指導者12名には共通してあります」

 逆を突く。相手の予測に反するプレーをすると言い換えてもいいが、これを身につけるのは大人でも難しい。ボールの置き所、体の向き、相手との距離感、味方との連携、戦術理解といった総合的な能力が求められるからだ。

 重要になるのは「判断力」だと東代表は話を続ける。「うちの練習は4対2の鳥籠(とりかご)と呼ばれるボール回しが基本です。2人のDFにボールを取られないようにパス交換をするのですが、プレーエリアを限定したり、ボールタッチ数を制限したり、いろんな〝縛り〞を設けながら行います。その変化に対応する力が身につき、DFとの距離感やパスコースを作る動きなどの実戦感覚も磨かれる。つまり、判断力が養われます」

 実際、選手たちに自分の持ち味は何かと問うと、キャプテンの古荘隆太(貴生川小6年)は「判断力と駆け引き」と即答し、副キャプテンの山岡凌陽(同小6年)も「判断力。技術と強さ」と話した。

 そして、もう一人の副キャプテン小澤璃久(同小6年)は少し考えた後、「常に全力を出せる、諦めない気持ち」と答えた。隣の古荘と山岡からは「別に同じ答えでもええねんで!」とヤジが飛ぶ。

 おそらく小澤は、同じ答えでは記事にならないと筆者に気を使ってくれたのだろう。これも判断力のなせる技である。アッズーロがチーム登録からわずか6年で全国区になった理由が、3人の何気ない会話からも理解できた。

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