2021.03.31
日本一長いリーチを持つ日本代表 全国連覇の先に“パリ”を見据える。 宇野正則
わずか2年で日本の頂点に
2019年12月1日。「第11回国際クラス別パラ卓球選手権大会」で、草津市出身の宇野正則(コスモトレードアンドサービス)が初優勝を飾った。競技を初めてまだ2年少々での快挙。4年後のパリパラリンピック出場へ向けて、本格的に歩み出すはずだった。だが、パリパラへの道はコロナ禍で急ブレーキがかかってしまう。
「出場は世界ランキングによって決まりますが、まだ国際大会でのポイントがなく、ランクインできていませんでした。日本一の勢いをもって、これからポイントを積み上げていこうと思っていましたが、コロナ禍で国際大会が次々と中止になってしまいました」
当たり前だが、大会がなければポイントは得られない。未だに日本王者・宇野の名前が世界ランキングに載っていない理由は、今の情勢に関係している。
「ですので、今年はまず国際大会派遣選手になって世界ランキングに入ることが目標です。そしてパラ卓球選手権( 11月下旬予定)で2連覇を果たすこと。2019年の優勝が〝まぐれ〞ではなかったことを証明したいと思っています」
〝長い腕〞が相手の脅威に
22歳の時、交通事故で頸髄を損傷した宇野は、四肢(両手・両足)に麻痺が残った。握力は右手が0、左手が5。バンドをグルグル巻きにしてラケットと手を固定しないとプレーができない。障がいの重度によって5つにクラス分けされる車いす卓球の中で、宇野は2番目に重い「クラス2」の選手だ。
特にクラス2では選手たちに体幹機能障害もあるため、ネット近くでサイドに切れるボールは有効なショットとなる。手が届かないからである。だが、身長181㎝の宇野はクラス2の国内選手の中で最も腕が長く、ボールを拾える範囲が広い。
「相手は嫌だと思います。今まで決まっていたショットが拾われるわけですから。車いす卓球はメンタルが重要だと言われますが、私の長いリーチは相手に大きなプレッシャーを与えるので有利です。まさに〝武器〞ですね」
宇野自身のメンタルも強いという。守山北高校時代は全国高校サッカー選手権大会滋賀大会の決勝に進出したチームで活躍。車いす生活になった後も、車いすラグビーや車いすツインバスケットなどで勝負強さを養ってきた。ちなみに、車いすツインバスケットでは約10年間キャプテンを務めた。かなりハイレベルな環境でメンタルは磨かれた。
「高校時代は毎日5キロくらい走った後にボール練習に入るなど、松田先生(松田保・現滋賀県サッカー協会名誉会長)は厳しかった。でも、その中で常に向上心を持つ気持ちなどを学び、今のパラ卓球でも役立っている部分はありますね」
名門サッカー部などを通して培われた強いメンタルと長いリーチを武器に、湖国育ちの日本代表は虎視淡々と2024年のパリパラリンピック出場を狙っている。
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うの・まさのり。1982年11月6日生まれ、草津市出身。株式会社コスモトレードアンドサービス所属。笠縫東小学校、新堂中学校、 守山北高校卒。高校時代は全国高校サッカー選手権大会滋賀県大会で決勝進出。22歳の時に交通事故で頸髄を損傷し、四肢に麻痺が残っ た。その後は、水泳やテニス、車いすツインバスケットボールなど多くのスポーツを経験。2017年5月には車いす卓球チーム「M.S.T」を立ち 上げて競技を始める。2019年には国内最高峰の国際クラス別パラ卓球選手権大会で初優勝を果たした。