2021.01.23
[陸上競技比叡山高校]今日が“一番”になるように…。 多彩なアプローチで選手を育てる。
今日が“一番”になるように…。 多彩なアプローチで選手を育てる。
[陸上競技]比叡山高校 陸上競技部(短距離)
10月中旬の「全国高等学校陸上競技大会2020・リレー競技」に、比叡山高校陸上競技部(短距離)から県内最多10選手がエントリーした。
4×100mリレー(森本・横山・森田・辻田)、4×400mリレー(森田・森本・横山・青西)ともに決勝進出は逃したものの、2年生主体のチームとしては上々のタイムを叩き出した(4×400mRは3分19秒36)。特に4×100mRで出した41秒02は、1、2年生のみで構成されたチームの中で全国3位。来年のインターハイに期待が膨らむ結果となった。
比叡山の短距離が熱い。その理由について、武田健太顧問は「滋賀県は小・中学校の指導者が優秀。我々はその恩恵を受けているだけです」と謙遜する。それも一理あるが、小・中学校の〝貯金〞だけで強くなれるほど陸上競技は甘くない。〝熱い〞理由は、毎日変わる練習メニューにありそうだ。
「今日が〝一番〞になるように」(武田)という想いで組まれる練習は、2〜4㎏のメディシンボールを投げ合いながら坂道を駆け上がるものなど独特なものが多い。それを大会までの日程や季節などを考慮して組み合わせていく。また、選手の成長度やコンディションなどにあった個別メニューも加えていくという。実業団選手として活躍した武田顧問の観察眼が活かされる部分である。
コロナ自粛期間も、タブレット端末を活用し、動画のやり取りなどを通して、一人一人にあった練習メニューを模索してきたという。
200mで全国ユースランキング1位(1、2年)の横山大空(2年)は「全国大会前にケガをし、気持ちにあせりがあった。その時に自分の回復具合を見ながら先生がメニューを組んでくれた。大会に間に合ってよかった」と打ち明ける。
だが、武田顧問の存在だけではなく、部の雰囲気やライバル関係も〝熱い〞理由のようだ。
100mの辻堂悠斗(2年)は「近畿1位の横山がいて、全国ランキング26位の辻田(幸輝)もいる。そういう選手が近くにいるとモチベーションが上がる」と話し、辻田は「とにかく雰囲気が明るい。だから、苦しい練習でも楽しくできる」と言う。
厳しい練習の代名詞であるマイルアップも、みんなで乗り切る。400m全国ランキング17位の森本錬(2年)はこう話す。
「400mを続けて3本走るマイルアップは、最も苦しい3本目に一番速く走れないと、また最初からやり直し。正直、苦しい。でも、みんなと競いながらやると楽しい」
さらに、OB・OGも参加する年に1度の「煩悩ダッシュ」も比叡山の結束を高める恒例行事だという。ルーレットで走る距離( 10〜150m)を決め、坂道を108本ダッシュする。走ることで108つの煩悩を払うのが一つの狙い。森田匠(2年)は「煩悩を払えるかどうかはわかりませんが、確実にメンタルは鍛えられると思います(笑)」と話す。
毎日異なる練習、ライバル関係、そして恒例行事…。正直、強さの秘密があり過ぎて、理解するのは難しい。ただ、それも狙いの一つのようだ。武田顧問はこう話す。
「陸上の専門用語もバンバン使いますし、いろんなこともやらせます。選択肢を増やすことが私の役割。選手たちも多くのことを経験しておく方が、大学や社会人になった時に役立つと思います。滋賀で育った子が、ずっと滋賀で活躍できる環境を作り、比叡山がその過程にあればうれしい」
小・中学校から渡されたバトンを、未来へつなぐ第3走者。比叡山は湖国の中で、そんな役割を担っていくのかもしれない。