2019.11.15
Challenger 滋賀で眩く輝く #2 齋藤拓実
「挑戦者」が眩い輝きを放ち続けている。今シーズン、リーグ2連覇の王者アルバルク東京から滋賀レイクスターズへ期限付き(レンタル)移籍で加入した齋藤拓実。プロ入り後の過去2シーズンで先発出場が一度もなかったが、今季は開幕から不動の先発ポイントガード(PG)としての起用が続く。座右の銘に「Challenger」を刻む24歳は、滋賀で大きく羽ばたこうとしている。
今シーズンのレイクスのPGユニットには昨季のスターター伊藤大司、シーホース三河で2季キャプテンを務めた狩俣昌也、大卒ルーキーの中村功平と、リーグを見渡しても質量とも充実のメンバーが揃った。その中でショーン・デニスHCが開幕スターターに指名したのは齋藤だった。
牛若丸のような身軽さ
「試合にたくさん出られるのは、とてもやりがいがある。楽しくやらせてもらっている」。開幕戦の京都ハンナリーズ戦で7得点、7アシスト、2スティールをマークすると、2戦目から4試合連続で二桁得点。ジュリアン・マブンガ(京都)やライアン・ロシター(宇都宮ブレックス)ら、リーグ屈指のビッグマンを牛若丸のような軽い身のこなしでかわしてシュートを決めてしまう身長171cmの小柄な男は、早くもブースターの心を鷲掴みにした。
大学時代から〝世代No.1ガード〟と騒がれ、ユニバーシアード日本代表にも選ばれた。だが、アルバルク東京では年齢の近い先輩である安藤誓哉と小島元基の壁が分厚く、十分な出場機会が与えられなかった。プロ3シーズン目を迎えるにあたり、選択したのが「移籍」。理論家という点でルカ・パビチェビッチHCと通じる部分があるデニスHCの下で、飛躍のきっかけをつかむために「挑戦」を決意したのだった。
アーリーカップで得た気づき
公式戦初先発となったアーリーカップ関西では苦い経験をした。チームの連携が成熟していなかったことも大きいが、齋藤自身も見せ場を作ることができず、B2のバンビシャス奈良にまさかの完敗を喫した。ただ、この経験である意味吹っ切れる部分があったという。
「アーリーカップの時は、一緒に出たメンバーを見ながらやらないといけないと思ってしまい、(慎重になりすぎて)〝置きに行っていた〟部分があった。あれで、僕自身はもっとアグレッシブにやらなければいけないんだと認識できたのは大きかった」
リーグ戦に入ってからの齋藤には、全く〝置きに行っている〟様子はない。トランジションでボールをプッシュし、レイクスのオフェンスをテンポアップさせるばかりか、自らが率先してリングに向かってアタックし、相手の守備網を切り裂いている。「そこが自分の持ち味でもある。僕が(相手ディフェンスを)切っていかないと、ディフェンスも収縮しない。収縮したときにうちにいるシューター陣が一番輝くのかなと思っている」。
アシストでTOP5入り
10月26日の秋田ノーザンハピネッツ戦では9アシストを記録し、1試合平均アシスト数でリーグランキングのトップ5入りを果たした。シューター型の狩俣や、コントロール型の伊藤とは異なる「スラッシャー型」は、昨シーズンのレイクスには欠けていたタイプの司令塔。「自分がクリエイトするところはどんどん狙って行こうと思っている。トランジションはどんどんプッシュしていくことを心がけている。それが結果に繋がっているのはいいこと」と齋藤。
一戦一戦が貴重な経験値の積み重ね。「最終的な目標はチャンピオンシップ出場をチームで掲げている。直近の試合だけでなく、最終的な勝率でCS出場を狙えたら」。レイクスの悲願達成には、リーグ内でも注目を浴びる存在になりつつある新星PGがどこまで大きく成長できるかが大きなカギとなってきそうだ。
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齋藤拓実(さいとう・たくみ)
滋賀レイクスターズ
1995年8月11日生まれ、神奈川県出身の24歳。桐光学園高、明治大を経てアルバルク東京入りし、1年目から2年連続でリーグ優勝を経験。昨季終了後に滋賀レイクスターズへ期限付き(レンタル)移籍した。大学時代にU24日本代表に選出。身長171cm、体重66kg。