2017.07.01

[マスターズ陸上]滋賀マスターズ 曽野政男

50年越しの金メダル。

中学の時に描いた夢を実現

2017年4月。 滋賀マスターズ所属の曽野政男(63)がニュージーランドで開催された 「ワールドマスターズゲームズ2017」 の10㎞マラソン(60-65歳)で金メダルを獲得した。 タイムは38分28秒。 ゴールした瞬間 「やっと人生の宿題が終わった」 と思ったと言う。

曽野が本格的に陸上競技を始めたのは中学2年の頃。
「中学1年のスポーツテストで1500mを走ったら、3学年合わせて一番速かった。先生から”1週ズルしたやろ”と言われて…、してないと言うと”陸上やらへんか”ってなった(笑)」

実際、曽野少年は速かった。 顧問から”オリンピックに出られる”と言われ、中学の卒業文集には 「オリンピックで金メダル」 と書いた。10年計画を立て、1980年のモスクワ五輪出場を目指し、79年にはびわ湖毎日マラソンにも出走した。
「でも、同じ時代に瀬古利彦や宗茂・猛兄弟らすごいのがいてね。 日本がモスクワ五輪をボイコットしていなくても、彼らに勝つのは難しかったと思います」

だが、中学の時に描いたオリンピックで金メダルという夢は、その後もずっと頭に残ったと言う。
「49歳の時、実業団チームの監督として教え子を見ていて、いつもフラストレーションが溜まっていた。最初は選手への不満だと思っていたが、実は指導しながら自分の競技人生を悔いていたのだとわかった。 やっぱり金メダルが取りたい。 もう1回、自分が納得できる走りをしたいと思うようになった」

やり残した人生の宿題を片付ける挑戦が、ここから再び始まった。

100歳でフルマラソン完走

今年のワールドマスターズゲームズへ向かう前、曽野は体脂肪率を約3%まで絞った。 そこまでストイックに追い込めるのは、ある憧れの存在があるからだと話す。
「1500mで80歳の世界記録を持たれている宮内義光さんの走りを見て、え、ほんまに80歳?って思ってしまった。とにかく速い。 自分も…と憧れましたね」

また、同じ立命館大学で練習を重ねていた視覚障がい者女子マラソン日本代表の近藤寛子(滋賀銀行)にも影響を受けた。
「リオを目指す彼女の表情がみるみる明るくなっていった。 改めて目標を持つ大切さを知った。 モチベーションの一つになりました」

ほかにも滋賀マスターズの仲間、国旗に応援メッセージを書いてくれた方々など、曽野は多くの方々にいい影響をもらって50年越しの悲願である金メダルを獲得することになる。 ワールドマスターズゲームズの表彰台の真ん中に立った曽野は、人生の宿題をやり遂げたという思いとは別に、想定外の感情が浮かんできたと話す。
「頂点というものは1人で立つものだと思っていたけれど、実際は出会った人たちみんなで立つものやったんやなと。 自分が想像していた金メダルの景色よりも、ずっと素晴らしいものでした」

2021年には 「ワールドマスターズゲームズ関西」 が開催される。 滋賀会場では、曽野が金メダルを獲得した10㎞マラソンも行われる。もちろん曽野は2連覇を目指すわけだが、目標はもっと先に定めているからおもしろい。
「今の目標は100歳でフルマラソンを完走すること。それくらい高い目標を持っていたら、ワールドマスターズゲームズの連覇も一つの通過点になるでしょ(笑)」

曽野はすでに新たな人生のロードを走っているようだ。

曽野 政男

滋賀マスターズ

Profile/その・まさお。1954年4月16日生まれ、三重県出身。1973年に自衛隊体育学校へ入り、1991年~八千代工業のプレイングマネージャーに。その後は1993年に同チームの監督、1995年に総監督を務めるなど指導者となる。世界マスターズ陸上競技選手権大会では2009年と11年に3000m障害で銀メダル。15年に退職し、栗東市へ移住。16年の世界マスターズでは2000m障害と1500mで銅メダルに輝き、17年4月にはワールドマスターズゲームズの10㎞マラソン60-65歳の部で優勝した。

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