2022.06.22
全日本選手権HCレポート 杉藤洋志
全日本選手権HCレポート
レイクスターズロウイングクラブ(LRC)
杉藤洋志ヘッドコーチ
レイクスターズロウイングクラブ(以下LRC)にとって初出場となる全日本選手権は、100回目の節目の大会でした。日本ロウイングの新たな100年に向けて、これまでにないチャレンジをしようとしていることを、数字からも実感しながらの大会参加でした。その重要な大会で、岡田遼太選手は堂々の3位入賞を果たしました。岡田選手は「三重選抜」選手として、97回大会(2019年)から8位、6位、そして昨年99回大会3位と順位を上げてまいりました。今年はもちろんメダル獲得が期待されていましたが、所属の変更、練習環境の変更のなかで開催された今大会は見えないプレッシャーとの戦いがあったことだろうと思います。その中でのメダル獲得はたいへん立派な成績であったと思うところです。練習環境の変化について、もっとも大きかったのはやはり事実上のフルタイムアスリートであった前年までの所属から、レイクスターズスポーツ財団職員として、滋賀のスポーツ現場を文字通り支える現場で働きながらのトレーニングとなったことがもっとも大きな環境変化であったと思います。また、東京五輪日本代表選手であった荒川選手(NTT東日本)や岡田選手と同じ軽量級選手として近年日本ナンバーワンの地位にいる武田選手(関西電力)、が参加することで、これまでとは全く違うレベルの戦い、決勝進出それ自体も大きなチャレンジという今年の大会でした。いまや日本代表の主力といってよい荒川・武田両選手の後塵を拝したものの、同時にその高みに次に挑戦するのは岡田選手であることも印象付けられた今回の銅メダルには大きな価値があると評価できます。
今大会はこれまでの戸田コース(東京1964大会会場)から、海の森水上競技場(東京2020大会会場・以下SFW)へ場所を移しての大会でした。コース水面自体も広く、また周辺にも広々とした空間が広がるSFWでの大会開催にはおおいに可能性を感じました。私は昨年の東京大会では実況解説チームの一員として、レースを伴走しながら戦況を会場向けに伝える役目をしておりました。無観客試合であったために、伝える相手は会場に居る参加チームの選手やスタッフ、またボランティアスタッフやメディア向けのものでした。その実績を買われ、岡田選手のレースが終了した午後のレースではフィニッシュタワーからの会場向け・および配信向けの解説を仰せつかりました。レース前日にその役割を依頼されるなど準備も不足していた中でしたが、五輪時にもコンビを組んだ女性MCのリードもあり、なんとか役目を果たすことができました。こういった対応も、昨年までの戸田開催では考えられないことでした。施設・設備が老朽していること、土地の狭さ、会場となる水面のすぐ横には民家が迫っていることが要因です。今回のSFWでの開催では、いまだ初年度ということもあり、運営側がこの施設の潜在力を全く引き出せていないことも露見しましたが、それだけに今後の発展性には大いに期待できるところだと思います。まず第1に、これまでの決勝4クルーから6クルーへ、また最終レース進出者が8クルーから最大18クルーにまで増加で来たレースプログラムの変化は、必ず日本全体のレベルアップにつながると確信しました。似通ったレベルの相手との厳しい争いの中で得る気付き、それを自分のホームに持ち帰る選手がほ倍増したこと、これが会場変更の最大の効果でした。来年度の大会では大会運営のレベルアップとともに、日本じゅうの選手たちのレベルアップした漕ぎっぷりが見られることでしょう。これまで順調に順位を上げてきた岡田選手が、より厳しさを増すであろう表彰台の高いところを争う姿をお見せしたい。その目標にLRC競技部門選手・スタッフ一丸となって取り組むことを誓い、この稿を結びます。