2020.07.27
競技人生にゴールはない [陸上競技]犬井亮介
競技人生にゴールはない。
その信念が原動力となる。
「キザな言い方になってしまいますが、自分の競技人生にゴールはないと思っています」
筑波大学大学院の犬井亮介(2年)はそう述べる。ただ、俗に言う〝生涯現役〞という意味合いではなく、ずっと陸上競技に関わっていくというスタンスの話だ。
「競技人生にゴールはないとは言いつつも、いずれ引退の時は来る。セカンドキャリアでは指導者として競技に携わるのかなと自分では予想しています。現在取り組んでいることを、次は指導者として体現し、いい選手を育てていけるようにしたいです」
犬井は、竜王中学2年から始めた三段跳で頭角を現し、高校は名門・洛南高校へと進んだ。同級生には、男子100mの桐生祥秀や走幅跳の山川夏輝、400mHの高野健など滋賀出身の有望選手たちもいた。高校3年時には、彼らとともにインターハイ総合優勝に大きく貢献。卒業後は競技と学習の両面を考え、国立の筑波大学を選んだ。
三段跳では、2015年の関東インカレ準優勝、2017年の関東インカレ3位、日本インカレ5位など好成績を残した。ただ、その栄光の裏には苦労もあったという。
「入学当初は知識も乏しく、どんなトレーニングをすればいいか分からなかった。結果も出ず、怪我を繰り返す時期も続きました。でも、大学でさまざまな知識を得て、トレーニング方法や効果などについて理解が深まるに連れ、結果に結びつくようになりました」
2017年度には陸上競技部のキャプテンに就任。これが後に大学院へ進む上での転機となった。
「筑波大学は部員が250人以上もいます。当然、考え方もさまざまで目的や志も一様ではありません。そんな集団を同じ方向へと導くことは難しい。だから、全員に同じ方向を向かせるのではなく、まず同じ目的地を決めました。そして異なったアプローチで目的地を目指す部員たちを多角的に導いていこうと。その中で、あらゆる意見を聞けたことは、自分にとって大きな財産だと思います」
部員たちのさまざまな意見を聞きながら、自分の選択肢もいろいろあると思った。大学院進学も自分の可能性を広げるためだった。
「実業団選手として競技を続けるのも1つの選択肢でした。でも、いずれ競技は引退する。競技を続けたいというだけで進路を決定することにしっくりきませんでした。それに競技関連に限らず、知らないことが山ほどある。そういう理由で大学院への道を選びました」
大学では、主にコーチングについて学んでいる。コーチが有すべき知識や、指導するための能力を座学で身につけ、自身の競技生活や陸上競技部のコーチという実践の場でその知識を探求している。犬井の表現を借りるなら「科学知と実践知の融合」。日々、科学は進歩し、それを実践にフィードバックする活動は〝競技人生にゴールはない〞という犬井の言葉に通ずる部分かもしれない。
最後に滋賀の読者へメッセージをもらった。その中で、学問にも力を入れてきた犬井らしい言葉あったので紹介しておきたい。
「〝雪に耐えて梅花麗し〞という西郷隆盛の言葉があります。梅の花も寒い冬を耐え忍んで春には綺麗な花を咲かせます。(新型コロナウイルスの影響で)活動が自粛されても時間は変わらずあるため、できないことを嘆くよりも未来のためにできることをやる方がずっと有意義です。
私も、競技で明るいニュースが届けられるように、今は耐え忍びつつできる準備をしていきます。皆様にも、明るい日々が訪れることを心より願っております」
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犬井亮介
筑波大学大学院
Profilele/いぬい・りょうすけ。1995年9月8日生まれ、竜王町出身。竜王小学校、竜王中学校、洛南高校、筑波大学を経て、筑波大学大学院へ。現在、大学院2年。中学1年から陸上競技をはじめ、中学2年に三段跳と出会う。高校時代の2013年には、インターハイ三段跳4位、4×100mリレー優勝(第3走)、国体・三段跳2位など。大学時代は、2015年に関東インカレ2位、2017年に関東インカレ3位、日本インカレ5位、2019年には日本学生個人選手権3位などの好成績を残している。175㎝・63㎏。