2019.06.10
スポーツとデータ
令和のスポーツはデータとともに分析の進歩がすごさを読み解く
スポーツにおいてデータは切り離せないものとなっている。 最近では野球の投手が投げたボールの回転数やサッカー選手の1試合の走行距離といったデータが公開され、ファンがそれ自体を楽しむようになった。 こういったデータをもとにスポーツを 「読み解く」 試みも進んでいる。
スポーツとデータは、平成初期にプロ野球・ヤクルトの 「ID(インポートデータの略)野球」 によって一般にも認知されるようになった。 最近では高校野球の春のセンバツに出場した膳所高の 「データ班」 が注目された。様々な競技の試合中継を見ていても、随所にデータが散りばめられ、もはや一部のトップ選手だけのものでなく、身近なものとなってきている。
「ある良い選手がいた場合、その選手の”すごさ”を客観的に説明するためにデータが大きく役立ちます。 最近では技術的にも測定できるデータの種類が増え、例えば野球の野手の『守備力』 なども、数値で評価できるようになりました。 これは競技をレベルアップさせるだけでなく、観客がスポーツを深く楽しむことにも貢献します」 こう語るのは青山学院大学でデータサイエンスを教える保科架風准教授だ。
スポーツから分析人材を社会へ
保科さんは3月まで勤めていた滋賀大学データサイエンス学部の学生と出場した 「第8回スポーツデータ解析コンペティション」 で、野球とバスケットボールの2部門の入賞を果たした。 メンバーの神田樹さん(3年)は昔から野球選手の成績をチェックするのが好きで、データ分析に興味を持った。 「過小評価されている選手を正しく評価する方法をみんなに知って欲しかった」 と話す。
投手が投げたボールの回転数、打者の打球速度、弾道の軌道まで瞬時に数値化される時代では、スポーツにおけるデータの存在感は増すばかりだが、一方で、データ分析の専門家育成は始まったばかり。 その課題はビジネスなどスポーツ以外の日本の産業にも共通しているとされる。
「学生にも身近なスポーツは、データサイエンティストへの入り口にもなり得る」 とは保科さん。 平成から令和へと移り変わり、スポーツから日本を牽引する人材が続々と生まれるかもしれない。
[今月号の有識者]
青山学院大学 経営学部 准教授
保科架風さん