2025.12.18

滋賀の小学生からパワーを注入。デフ世界記録保持者、貫禄の〝金〞

 聴覚に障害のあるアスリートたちが世界から集うデフリンピック。今年11月には日本で初開催され、滋賀からはハンマー投でデフ世界記録を持つ森本真敏、走高跳の高居千紘、テニスの今井悠翔らが出場した。ハンマー投・森本の銀メダルなど湖国勢が躍動する中、金メダルを獲得したのが円盤投の湯上剛輝(トヨタ自動車)だ。

 今年9月の「東京2025世界陸上競技選手権大会」に日本代表として出場した湯上は、64m48の日本記録を持つトップアスリート。デフ世界記録も保持する彼だが、意外にもデフリンピックでの優勝は初めてだった。大会前にはこんなコメントを残している。

「今回で3回目の出場ですが、最初(17年トルコ大会)は銀メダルで、2回目(22年ブラジル大会)はエントリーしていましたが(コロナ禍の影響で)出場は辞退となりました。今年は初の日本開催ですし、なんとしても金メダルを取りたいと思っています」

 その言葉通り、22年ブラジル大会のリベンジに成功し、今シーズンを良い形で締めくくった。

「シガリク」で元気をもらう

 湯上は11月15日に地元・滋賀で行われた陸上教室「シガリク」に初めて参加した。国スポの滋賀代表選手らが小学生を指導するこのイベントには世界陸上に出場した走高跳の瀬古優斗ら日本トップアスリートたちも集まっていた。その中で、最も多く子供たちの“サイン攻め〞を食らっていたのが湯上だった。

「9月の世界陸上ではうまくいかなかった部分もあります。けど、僕自身は〝競技を続けていること〞を目標にしていますので、世界陸上という舞台に立ったことが大きいと思っています。競技人生の中でも大きなポイントになりましたし、本当に光栄な時間でした。こうして子供たちが僕の周りに集まってくれるのも、世界陸上のおかげかもしれませんね」

 ただ、デフリンピック直前のイベント参加にはコンディション面でデメリットもあったと思われる。

「いやー、逆ですよ。滋賀の子供たちの元気な姿を見て、僕自身も元気になりましたし、エネルギーをもらいましたから」

 結果論だが、地元・滋賀でのパワー注入が初の金メダルにつながったと言えるかもしれない。

湯上 剛輝

トヨタ自動車

ゆがみ・まさてる。甲賀市出身。守山高校、中京大学を経てトヨタ自動車へ。2017年デフリンピック銀メダル、2018年の日本選手権で日本人初の62m台のビッグスローで日本記録を樹立。62m16の記録は同時に世界ろう記録に。25年4月のオクラホマ・スロー・チャレンジで64m48をマークし、5年ぶりに日本記録を更新。今年9月には東京世界陸上に出場し、続く11月の東京デフリンピックでは大会新で金メダルを獲得した。

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