2025.10.30

クラウドファンディングが一役。 瀬田中ボート部が〝真夏の大冒険〞

24年ぶりに男子総合優勝

 7月26日・27日の全国中学生大会で、瀬田中学ボート部が好成績を収めた。中でも際立ったのが男子総合優勝( 24年ぶり5回目)と女子舵手付きクォドルプル優勝( 22年ぶり3回目)という快挙だ。

 男子キャプテン藤井良彦(3年)は「目標は男女総合優勝でした。残念ながら女子は総合2位でしたが、瀬田中ボート部全体としては部訓の〝練習で泣いて、本番で笑う〞を体現できたのかなと思います」と話す。

 男子総合優勝は最後の種目である男子舵手付きクォドルプルの結果によって決まった。

 司令塔役であるコックスの小松千騎(3年)は「決勝に残った6艇の中で自分たちのタイムが一番遅かった。全体が見えない6レーンに追いやられた時はちょっとヤバいなぁと。だから、普段はやらないような展開を試みました。(1000m中の)ラスト600mで第1段階スパートを発動して、残り400mで第2段階スパートをかけた。それがうまくいって2位に入れた」と振り返る。

 小松の2段階スパートはぶっつけ本番の秘策で、誰も知らなかった。それでもうまく対応できた臨機応変さに今年のクルーの強さがあった。

 圧倒的なパワーを誇る坂東遼空(3年)は「決勝前に総合2位とは5点ほど離れていたけれど、自分たちの結果次第ではどうなるかわからなかった。緊張感があった中で準優勝までもっていけた。普段、レースで泣くことはないんですけど、あの時は涙が止まらなかった」

 坂東が泣く。その姿を見て、クルー全員が船上で号泣した。

女子クォドは22年ぶり優勝

 女子舵手付きクォドルプルは準決勝から決勝まで3時間のインターバルしかなく、優勝までの道のりを逆算して戦っていた。コックスの關 杏香(3年)は「頭を使ったのは準決勝です。次の決勝を考えて最初の500mは本気で漕いで、ある程度離した上で残り500mは体力を温存するプランを組みました」と話す。

 そして決勝はスタートからパワー全開。狙い通りスタートから離す展開となったが、内糸 葵(3年)はちょっと違和感を覚えたという。

「意外だったのは他校が追い上げてこなかったことです。最初から最後までどんどん私たちが離していく展開。それには驚きでした」

 そしてクルー全員で声を揃えるようにこう言い放った。

「がんばってきた証拠かも」

〝真夏の大冒険〞は最強伝説とともに幕を閉じた。

寄付による後方支援も

 今大会は茨城県潮来市で開催された。男女総合優勝をめざす瀬田中学としては使い慣れた自分たちのボートを会場に運びたい。だが、学校から500㎞以上も離れており、ボート運送費が高額に…。そこで「瀬田中学校ボート部保護者会」を通して、クラウドファンディングで寄付金を募ることになった。

 生徒自らビラ配りなども行い、目標の50万円を上回る約80万円が集まった。瀬田中学ボート部の山室拓矢顧問は「日頃の練習の成果を出すには、乗り慣れた自分たちのボートで戦うことが一番です。その環境を整えたかった。クラウドファンディングでは100名を越す方々にご支援をいただきました。おかげで良い結果を出すことができたと思います。また、選手たちがみなさんに応援されていると自覚して戦えたことは大きな経験だったと思います」と感謝を述べた。

関連記事