2025.08.20
U 23 世界選手権に〝シングル〞で初出場。それは同世代の日本トップを意味する。
〝うれしさ〞が今までとは違う
ジュニアとU23を合わせて3度の世界選手権を経験している深尾美萌彬(武庫川女子大学)は、日本女子カナディアンの宝だ。2023年の全日本学生カヌースプリント選手権(インカレ)では200mと500mの2冠に輝き、女子カナディアン部門のMVPにも選ばれている。インカレ総合13連覇中の名門・武庫川女子大学の中でもスペシャルな1人だ。
そんな彼女が今年の7月23日〜27日にポルトガルで開催されたU23世界選手権は「特別です」という。WC-1と略される「シングル(1人乗り)」で初めてU23世界選手権に挑んだからだ。
「(3月の日本代表選考会で)U23のカテゴリーで日本のトップにならないと〝シングル〞の代表にはなれません。今までのようにペアで選ばれるのとは、やはりうれしさが違いました」
代表選考会はタイムではなく、レースでの一発勝負。参加選手の条件は同じ。その中で1位でフィニッシュし、〝シングル〞の座を勝ちとったこともうれしかった。
母校女子カナディアンの1期生
深尾が本格的にカヌー競技を始めたのは大津高校からだ。きっかけは小学生の頃に参加した体験会だった。「あの時の楽しい思い出があって、中学3年の頃にはカヌーをやりたいと思っていました。それで大津高で体験させてもらったりもしていました」。その流れもあって深尾は大津高校に進学した。
入学当初は座って漕ぐカヤックを行なっていた。だが、入部から半年後にカナディアンへ転向する。
「当時は女性がカナディアンを漕ぐのは少なかった。けど、大津高の男子が立って漕いでいるのを見てかっこいいなと。自分もカナディアンをやりたいと思いました」
その頃、大津高校カヌー部に女子カナディアン部門はなかった。普通ならあきらめてもおかしくないが、深尾は衝動を抑えきれない。結局、女子カナディアン部門を自分たちで立ち上げてしまった。
「大津校の女子カナディアンは私がやりたいと言って始めさせてもらいました」
この時の熱い想いと行動力は、今も深尾の原点である。
2度目のMVPをめざして
意外にも深尾は高校3年の時に「もうやめようかな」と思っていたらしい。だが、インターハイ後のU18世界選手権で準決勝まで進出し「また、カヌーが楽しいと思えるようになった」そうだ。
「世界の選手はみんな速いし、体格もいいし、堂々としていた。私たちとは比べものにならなかった。けど、もう少し頑張れば自分たちも追いつけるかなと考えるとワクワクが止まりませんでした。インターハイまでは競技をやめようかとも考えていましたが、U18世界選手権で気持ちが変わりました」
そして名門・武庫川女子大学の門を叩いた。「どうせやるなら強いところで」。再び、走り出した。
大学では「1日2回」という豊富な練習量をこなした。また、強い選手たちと一緒に漕ぐことで着実に成長。大学2年生のインカレでは2冠を達成し、女子カナディアン部門でMVPに輝いた。
だが、大学3年生だった2024年は、ケガの影響もあって思うような結果が残せずに悔しい思いをしたという。
「インカレ前にケガをしてしまい、思うように練習量が積めませんでした。それでメンタル的も少しダウンしてしまい、本番で全力を出しきれませんでした。」
それでも500mは2位、200mは3位。女子総合13連覇に大きく貢献したが、本人としては納得がいかなかった。それもあって、大学最後のインカレ(8月26日〜31日・山形)ではリベンジを誓っている。
「インカレでは出場種目を全て優勝し、2度目のMVPを取りたい」
まるで決意表明でもするように、鋭い眼光で意気込みを語った。
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深尾美萌彬
武庫川女子
ふかお・みもり。2004年3月6日生まれ、栗東市出身。葉山小学校、葉山中学、大津高校を経て武庫川女子大学へ。2023年全日本学生カヌースプリント選手権 WC-1 500m、200m優勝。カナディアン部門でMVPに輝き、武庫川女子大学の総合12連覇に大きく貢献。2024年はケガで苦しむも全日本学生カヌースプリント選手権WC-1 500m、200mで準優勝。WC-2 500mでは優勝を果たし総合13連覇に貢献した。そして2025年7月には日本代表としてU23世界選手権に挑んだ。