2022.05.15
INTERVIEW 03 ルイス・ギルHC
2026年の新B1参入を見据えたレイクス3ヵ年計画をひもとく
2026年からスタートする新B1では、参入条件として入場者数平均4千人以上、売上高12億円以上、新設アリーナ基準充足という高いハードル(24年度の審査時点)が設けられている。売上とアリーナに関してはクラブ側の比重が高いが、入場者数に関してはチームの人気が大きく関係してくる。新B1参入の初回審査が行われる2024年10月までに、どれだけ魅力的なチームに育て上げるかがテーマとなる。
この動きを総称してレイクス3ヵ年計画と呼ぶ。1年目にあたる今シーズンを、指揮官ルイス・ギルHCはどう評価しているのだろうか。まずは、3ヵ年計画の完成形をうかがった。
3年目にタイトルを争う
3ヵ年計画のゴール、つまりどういうチームを作りたいのかをまず教えていただけますか?
3年目の2023-24シーズンにB1リーグのタイトルを争えるチームを作ることが目標です。1年目の今シーズンはその目標に向け、フィロソフィー(哲学)やストラクチャー(構造)を植え付ける段階です。2年目の来シーズンは新オーナー(マイネット)の投資を受けて、プレーオフを戦えるようなチーム編成を組んで挑む。そして3年目にB1リーグのタイトルを争いに行きます。
チームスタイルとしては今シーズンのようなハードディフェンスからのファストブレイク(速攻)を追求していくことになりますか?
世界王者の経験があるスペイン代表がやっているようなことを滋賀レイクスターズに植え付けていきたいと思っています。柱となるのが、今おっしゃったハードディフェンスと速攻です。そして、もう一つ重要なことはオフェンスでボールをシェアすること。それぞれの選手がしっかり状況を判断し、全ての選手がオフェンスにとって重要だと認識して戦うこと。それを何度も繰り返し、選手としての成長を促していきたいと思います。
今シーズンB1リーグで戦ってきた相手の中で、レイクスがめざすべき理想的なチームはありましたか?
1つのチームではなく、いろんなチームからいい部分を拾っていけると思います。川崎ブレイブサンダースのディフェンスはいいものを持っていたと思います。千葉ジェッツや宇都宮ブレックスなどの速いテンポも私は好きですし、琉球ゴールデンキングスのような速いリズムの中でフィジカルを活かす部分も気に入っています。
例えば、川崎のハードディフェンスがあって、その後に千葉や宇都宮のような速い展開、あるいは琉球のようにフィジカルにプレーするとか。いい要素をしっかり融合させていけば、理想的なチームになっていくと思います。そのために必要なことは、一人一人のフィジカル・レベルを今シーズン以上に上げていくことです。
その基準となるような、今シーズンのベストゲームを教えてください。
それは次のゲームに出て来ればいいなと思います(笑)。それは冗談として、今シーズンを振り返った時に開幕10試合は非常に高いレベルでプレーできたのではないかと考えています。あの10試合は将来的にレイクスがやっていかないといけない良いイメージだと思います。ただし、それ以降は自分たちのレベルを上げるのに苦しんだのも事実です。
スペイン代表のような育成型
現時点でフィロソフィーはどれくらい浸透しているのでしょうか?
パーセンテージで示すのは難しいですが、自分としては満足しています。クラブの社長やオーナーもフィロソフィーを重視してシーズンを引っ張っていってくれていますからね。
チームとしては、B1リーグで選手の平均年齢が最も若いチームであり、また外国籍選手の退団があったりでなかなか結果を出せていないのが残念です。とはいえ、自分たちが見せたいバスケットの哲学的な部分はコートにしっかりと刻んでいると思います。そこには満足しています。
計画は3年ですが、1年目としてのチーム完成度はいかがでしょうか?
今シーズンに関しては、チームの完成度を求めるよりも、自分たちが日々良くなっている姿、それに向けて遂行できている部分、一つでも前進していることを皆さんに見せることが重要だと思っています。
それを土台にして、来シーズンにどのようなチーム編成をしていくのかが重要なテーマです。また、それが成功のカギだということも分かっています。フィロソフィーやストラクチャーを選手だけではなくスタッフにも植え付け、それぞれがチームを引っ張れるような組織を作ることが大事だと思っています。
その過程で今シーズンの残り約1ヵ月、チームに何を求めますか?
大きく2つあります。一つは100%で相手と競い合うこと。もう一つは1勝でも多く白星を挙げることです。その中で、選手たちが経験を積んでしっかり成長していくことが大事になってくると思います。
今シーズンもすでに柏倉哲平、キーファー・ラベナ、野本大智は成長を遂げてきたと思っています。小澤智将、森山修斗の2人に関しても成長は見られます。澁田怜音、川真田紘也、星野京介といった若い選手たちも終盤に経験を積んで成長できるはずです。
ブースターやファンにとっては、これだけ負けを喫する姿を見るのは辛いことだと思います。でも、忘れてほしくないのは、来シーズンからプレーオフに上がって、タイトルを争うために今シーズンがあるということです。
レイクスは育成型クラブを打ち出していますが、U15、U18とはどう融合させていくのでしょうか?
これも自分たちのストラクチャーにおいて重要なパートだと思っています。来シーズンはトップチームとU18、U15のつながりをもっと作っていければと思います。スペイン代表ではA代表が頂点にあって、その下にアンダーカテゴリーが続いていきます。下の選手たちはA代表をめざして努力します。レイクスでも同じようなストラクチャーを造り、トップチームが若い選手たちの目標やモデルになるような形を作っていきたいです。
育成に関わるU15の根間洋一HCやU18の寺下太基HCたちとは、すでに連係をとっているのでしょうか?
3月20日の京都ハンナリーズ戦の試合前に11歳、12歳を対象にしたクリニックを行いました。その際にミーティングを行い、彼らに自分たちがやっていることを伝えました。シーズンが始まると時間的になかなか難しい部分はありますが、来シーズンはもっとコラボしていきたいと思います。
ルイスHCが話すクリニックとは、京都戦(GAME2)の際に行ったスペインバスケットクリニックである。練習メニューをルイスHCが監修し、ルイスHC、保田尭之AC、セサル・カマラPC(パフォーマンスコーチ)の3人が試合前の貴重な時間を割いて直接指導にあたった。しかも、普段のトップチーム指導と同じ熱量で。ミニバス指導者向けの質疑応答も設けられるなど有意義な時間となった。
クリニックでは基礎を教えるのではなく、3対3などで状況判断が求められるシチュエーションを作るなど実践的なメニューが組まれた。ルイスHCが育成において大切にしているのがバスケットIQ。レイクスU15、U18だけではなく、ミニバス世代からスペイン色の種を蒔くことでレイクスの未来を構築しようとしているのかもしれない。3ヵ年計画は単に新B1参入を見据えたものではなく、その先も続く文化を構築するもののようだ。