2022.02.01
"4回転"をマスターし 世界へジャンプできるか 本田ルーカス剛史 [フィギュアスケート]
オーストリアでつかんだ自信
昨シーズンの本田ルーカス剛史(木下アカデミー)は飛ぶ鳥を落とす勢いだった。目標にしていた全日本フィギュアスケートジュニア選手権で優勝し、続くNHK杯フィギュアスケート国際競技大会では堂々の銅メダル。その躍進は今シーズンも継続中で、日本代表として出場した2021年11月のオーストリア杯では銀メダルを獲得した。ブレイク間近の19歳に、まずはそのオーストリア杯の感想を聞いた。
Q オーストリア杯銀メダルをどう受け止めていますか?
素直にうれしいです。今回は日本代表として挑み、世界ランキングのポイントが得られる8位以内を狙っていました。上位を狙える選手が何人か棄権した状況でしたが、自分もいい演技ができ、初日のショートプログラムを1位で終えることができました。結果的に総合2位でしたが、思っていた以上の成績を出すことができました。
Q コロナ禍の影響もあって海外での試合は久しぶりだったのでは?
2020年の年明けが最後だったので、1年半ぶり、アレ、もっとかな。海外での試合ということでテンションは上がっていました(笑)。せっかくいただいたチャンスなので、結果を残したいという思いも強かったですね。
Q 久しぶりの海外ということで、何かやりにくい部分はありましたか?
それはなかったです。ただ、国内に比べると、やっぱり海外は大らかなところがあるというか…。でも、トラブルにも臨機応変に対応できたのかなと思っています。
Q 何かトラブルが?
2日目のフリープログラムで少し。6人1組の5グループに分かれて朝の公式練習を行うのですが、僕のいる5グループが時間通りに始まりませんでした。最初から4と5グループの間には1時間くらいのインターバルが設けられていたんですが、プリントミスか何かだと思っていました。そうしたら、4グループの練習の後になんとアイスホッケーの練習が始まりました(笑)。運営側もちゃんと理解していなかったみたいで、何もアナウンスがないまま、製氷も無しでアイスホッケーの練習がスタートし、しかもアイスホッケー選手たちは練習が1時間半だと思っていたみたいで…。結局、25分くらいスケジュールが遅れて5グループの練習が始まりました。途中にアイスホッケーの練習が挟まれていたのは初めての経験でした(笑)
Q そんなトラブルを乗り越えて迎えたフリープログラム。ご自身の手応えはいかがでしたか?
最初のジャンプは4回転トゥーループでした。4回転ジャンプが跳べないと北界とは戦えないということで練習を重ねてきた技で、2021年の9月後半に跳べるようになったジャンプです。着地がややグラつきましたが、なんとか転倒せずに立つことができ、自分の中では大きな収穫でした。でも、演技後半の2つのジャンプを回転の途中で開いてしまい、2回転ジャンプになってしまった。それがなければ優勝できていたと思うので悔しい気持ちもあります。ただ、あの大会で力を出し切るよりも悔しさを残して終われた方が今後につながるはず、と自分に言い聞かせました。
「全日本6位以内」の意味
Q 4回転ジャンプを公式戦で成功したのはオーストリア杯が初ですか?
ん〜、正確には成功していないんです(笑)。試合後に点数票を見ると、最初の4回転トゥーループは少し回転が足りないという判定でした。
Q とはいえ、4回転ジャンプに対する自信は芽生えたのでは?
そうですね。ほんとギリギリでしたけど収穫は得られたと思います。もちろん、もっと簡単に4回転ジャンプを跳べないと上位は狙えないのですが、前進はできたと感じています。
Q 今シーズンからフリープログラムの曲を変更されましたが、もう自分のものにできている感覚もありますか?
この曲(ブルース・フォー・クルック)は憧れの先輩の一人である高橋大輔さんがやられていた曲で、すごく難しいです。大輔さんを越えたいと考えるのではなく、どうやって自分らしさを出していこうかと考えながらこの曲と自分の演技に向き合ってきました。少しは自分のものにできてきているかなという印象はあります。
Q ちなみに高橋大輔さんのどこに憧れているのでしょうか?
ステップはもちろんすごいのですが、腕を少し伸ばしただけで観客が魅了される美しさですね。指先、足先、ほんと毛穴まで神経を研ぎ澄ませていると感じますし、顔の角度や目線だけで観客を惹きつけます。あの表現力はすごいなといつも思います。
Q 今シーズンの目標を全日本選手権6位以内と公言されています。その理由を教えてください。
今回の全日本選手権(2020年12月23日〜)は北京冬季オリンピックの選考会になっています。僕個人としては〝北京の次〞を狙っているのですが、そこに向けて今回は「オリンピック選考会を兼ねた全日本選手権」を肌で感じられる貴重な機会だと思っています。ショートプログラムで6位以内に入るとフリープログラムで最終グループで滑走できます。ものすごい緊張感だと思いますし、それを経験したいという思いもあって6位以内にしました。また、6位以内に入ると、2022年の四大陸選手権など国際大会の補欠に選ばれる可能性もある。それも6位以内を目標にした理由です。
Q 手応えはいかがですか?
ん〜、正直やってみないとわからないです。周りの選手もオリンピック選考会なので調子を上げてくると思いますし、実際に今シーズンはみんな点数が高いです。この中を戦うのかぁという不安がある一方で、オーストリア杯のように自分の演技ができて、なおかつ点数も付いてくれば6位以内もあるのかなと思っています。
原稿作成時点(12月中旬)で、全日本選手権はまだ行われていない。ただ、オーストリア杯の話を聞く限り、6位以内という目標が現実離れしているとは思えない。朗報を期待しつつ、今回はこの辺りで筆を置きたい。
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本田ルーカス剛史
木下アカデミー
ほんだ・るーかす・つよし。2002年9月15日兵庫県生まれ、大阪府出身。2020年4月から木下アカデミー所属。レイクスサポートアスリート。滋賀・綾羽高校を経て2021年4月から同志社大学スポーツ健康科学部へ。2020年全日本フィギュアスケートジュニア選手権優勝、2020年NHK杯フィギュアスケート国際競技大会3位ほか。