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2021.09.04

初めてのパラリンピック。ウキウキが止まらない 宇田秀生

東京2020オリンピックの余韻が残る中、8月24日には東京2020パラリンピックが開幕する。滋賀ゆかりの選手は12人。うち9人は東京2020大会が初出場というフレッシュな顔ぶれに。
湖国にどんな感動を届けてくれるのか。今、躍動の瞬間(とき)を迎える。

〝びわ湖〞が良かったので

26歳の時に仕事中の事故で利き腕の右腕を切断された宇田秀生(NTT東日本・NTT西日本)は、事故から半年後の2013年にトライアスロンを始めた。最初はリハビリの一環だったが、2015年の第1回びわ湖トライアスロンin近江八幡大会でレースデビューを果たすと、そこから人生の第二幕が大きく動きはじめる。

デビュー2ヶ月後のアジア選手権で初出場・初優勝を飾ると、同年12月にはJTUパラトライアスロン強化指定選手に。2017年7月には世界ランキング1位になるなど、一気に世界的なアスリートへと進化していく。そして、今年7月8日には一つの目標に掲げていたパラリンピック日本代表にも正式に選ばれた。翌日、「寝不足ですわぁ」という宇田に、リモート取材で話を聞くことができた。


Q 代表内定おめでとうございます。今の率直な感想を聞かせてください。

自分の持っている世界ランキングポイントから、出場できるのはほぼ分かっていたのですが、やっぱり正式に発表されて〝良かった〞というのが一番の感想です。これで、やっと自分からパラリンピックについて発信できますから。どちらかと言うと、僕よりも家族や周りの方が喜んでくれていました。昨日(発表当日)はうれしいことにすっごく多くの祝福メールが届いて…おかげで寝不足です(笑)。地元の友だちとか、一緒にサッカーやっていた先輩・後輩とか。中には友だちのオトンとか…なんでやねん(笑)。ほんま、ありがたい話です。

Q 2015年の〝びわ湖〞がレースデビューですが、改めてこの大会は宇田選手にとってどんな意味がありますか。

満足のいくレースができて、いい思い出になった。トライアスロンを続けていこうと思えるレースだったと思います。もし、あの大会がただただ苦しいレースだったら、また変わった人生になっていたかもしれません。その時の実行委員の方々もすごく暖かく迎えてくれましたし、トライアスロンの世界に気持ちよく入れるきっかけになった大事な大会ですね。

Q 競技を続けるという点では、翌年のリオ2016パラリンピックでトライアスロンが正式種目になったのも大きかったのではないですか。

そうですね。それがあったので、ちゃんと競技をして、あの舞台を狙っていこうという気持ちになりました。なんというか、新しいもの好きの僕としては〝初めて〞という響きも胸に刺さるものがありました。

Q 2017年には世界ランキング1位にもなられますが、クラス編成が変わるなど、なかなか難しい時期もあったのではないでしょうか?

リオ2016大会後のクラス分けは、僕目線で言うと影響が大きかったですね。一つ軽い障がいのクラスから何選手かが降りてきましたので。主に義足の選手が降りてきましたが、彼らは両腕があるのでスイムが速い。今も彼らはトップクラスにいますし、単純に自分の順位が下がった。そういう点では難しい時期もあったと思います。

Q そのスイムでは水のかき方をS字からI字に変更したそうですが、その理由と狙いを教えてください。

そもそもフォームが違いますし、いろいろと言い出すと難しいんですけど、もっとも違うのはパワーの必要性だと思います。S字の場合は水を逃しながらかきますが、I字はずっと腕に力がかかっている状態。推進力は出ますが、その分、筋肉量を増やす必要がありました。

Q 巷では〝鉄の左腕〞とか言われているようですが、それもI字に変えたことが発端なんでしょうか?

誰が最初にそう言わはったのかも定かではありませんので、僕にはわかりません(笑)。でも、全体的に体は大きくなりました。この2年ほどで、筋肉量は2㎏ほど増えましたね。

Q 新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京2020大会が1年延期になりました。宇田選手にとって、この1年はプラスに働きましたか?それともマイナスだったでしょうか?

僕的には圧倒的にプラスです。オリンピックをめざす選手と合宿できたり、そういう出会いが多かったりしましたので。彼らと一緒にトレーニングすることで、必然的に自分のパフォーマンスはあがりますし、精神的にも勉強させてもらいました。

Q パラリンピックへの想いが強過ぎて、練習中に泣いてしまうことがあるそうですが、改めてパラリンピックでの目標をお願いします。

練習で気持ちが昂って、本当に泣くことがあります(笑)。冗談抜きで。もちろん、ワーワー泣いてたら走れませんから、大泣きではないですけど。いろんな選手と練習させてもらって、彼らは合宿が終わった後でも応援してくれるんです。そういう選手の顔が苦しい時に浮かんできて、気がついたらウルウルしている(笑)。
彼らにも言っていますが、目標は表彰台です。実際に立てたら、今度は前がにじんで見えないくらい、ワーワー泣いていると思います(笑)

Q スイム750m、バイク20㎞、ラン5㎞、トランジットも含めて、表彰台へのポイントは何だと思われますか。

やっぱりスイムです。スイムを頑張って11分台で上がれたら、トップ集団の背中が見えていると思います。僕はターゲットが見えていると強いので、そういう展開になると表彰台も見えてくると思っています。

Q 滋賀の読者にメッセージをお願いします。

初めてのパラリンピックなので、ウキウキしています。よく言うじゃないですか、オリンピックやパラリンピックはほかの大会とは違う雰囲気があるとか。そういうのがほんまにあるのかどうかを体感できると思ったら、今から楽しくて仕方がない。その中でどれだけ自分のパフォーマンスを出せるか。その上で、僕が競技する姿を見て、何かを感じてもらえたら
うれしいなと思います。


インタビューは彼のポジティブな性格もあって、終始明るい雰囲気で行われた。そのマインドはどうすれば生まれるのかを最後に訊ねた。すると、こんな答えが返ってきた。

「(ポジティブ思考になるには)あまり物事を大きく捉え過ぎないことですね。物事を大きく捉え過ぎると、力みや萎縮につながる。いい意味で物事を小さく捉えて、ちょっと余裕をもった感じでアプローチした方がうまくいくように感じています」

パラリンピックは大舞台だが、あまり大きく捉え過ぎず。そう自分に言い聞かせるかのように話した宇田の本番は8月28日(土)6時30分に始まる。

宇田秀生

NTT東日本・NTT西日本

うだ・ひでき。1987年4月6日生まれ、甲賀市(旧信楽町)出身。雲井小学校、信楽中学校、水口高校、関西外国語大学卒。NTT東日本・NTT西日本所属。レイクスサポートアスリート。2015年ASTCアジアパラトライアスロン選手権(スービックベイ)では初出場で初優勝を飾る。2015年12月からJTUパラトライアスロン強化指定選手に認定。2017年7月には世界ランキング1位に。東京2020大会が自身初のパラリンピック出場。

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