2020.04.15

徹底して“why?”を追求 福井新大 空手道

たどり着いた国公立の頂点。

長い長い緊張の糸がプツンと切れ、全身のこわばりが一気に抜け落ちた。コートを出るまでは、武道家らしく喜びを露わにしないように努めましたが、歓声が次第に強く聞こえ、(感情が溢れ)チームのもとへ走りました」
昨年11月の「第41回全国国公立大学空手道選手権大会」男子個人形競技を制した福井新大(滋賀大学3回生)は、優勝を決めた瞬間をそう振り返った。〝長い長い緊張〞とは、約2分間の演武ではない。1回生時に同大会で一回戦敗退をしてからの、約2年という長い時間を指している。
岐阜県出身の福井が空手道を始めたのは7歳の頃。大好きなサッカーをするための条件として、両親が空手道との両立を提示したという。最初は渋々だった空手道だが、結果が出ると楽しくなった。「架空の相手との技の攻防を緻密に再現する表現力」という形のおもしろさに夢中となり、中学や高校では数々の大会で優勝を果たすまでに成長していた。

そんな福井にとって、2年前の一回戦敗退は受け入れがたい屈辱だった。「この舞台で優勝するまで撤退しない」。負けず嫌いに火が点いた彼は、徹底して〝why?〞を追求していくことになる。
「なぜ動作にインパクトがないのか、なぜ身体に無駄な力みが生じるのか、自問自答しては何度も繰り返しました。具体的に言うと、1回生の頃の私は技に重厚さが欠けていました。この2年間のうち、1年目は体格を一回り大きくするために努め、2年目は約2分間の一連の形を妥協なく何度も繰り返しました。脳と筋肉をつなぐ神経まで鍛えるという強い思いで練度を磨きました」 言葉にすれば数行だが、黙々と自分と向き合ってきた2年間は忍耐の連続だった。優勝の際、感情を抑えきれずに自分を支えてくれたチームのもとへ走り出したエピソードが、その苦悩を物語っている。まさに〝長い長い緊張〞の日々だったことがうかがい知れる。
そんな空手家が掲げる今年の目標は「挑戦」。大学を1年休学し、海外へ長期留学する。
「空手道だけに15年間を費やしてきたため、視野を大きく広げる必要性を感じています。本気で自分の進路と向き合いたい。もちろん、空手道は継続して関わりたいですし、今後は指導という立場で65年の伝統ある滋賀大学空手道部に関わりたいと思っています」
国公立の〝頂点〞という結果は、福井に〝挑戦〞という新たな壁を与えたのかもしれない。

福井 新大

滋賀大学

ふくい・あらた。1997年10月19日生まれ、岐阜県出身。岐阜県立関高校を経て滋賀大学へ。7歳から空手道をはじめ、中 学時代は第20回全国中学生空手道選手権大会(男子個人形)5位入賞、はまなす杯 第6回全国中学生空手道選手権大会(2年男子 形)3位、高校では国民体育大会第36回東海ブロック大会少年男子形競技で優勝などの輝かしい成績を残している。165㎝・65㎏。

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