2019.12.20

エース候補から〝切り札〟へ #24 高橋耕陽

高橋耕陽の調子が上々だ。昨シーズンの前半戦はスターターに起用されながら思うような成績が残せない試合が続いたが、今シーズンは16試合で8度の二桁得点をマーク。「エース候補」と、ありがた迷惑な称号が付きまとい続けてきた背番号24は、今シーズンはベンチスタートから試合の流れを変える重要な「切り札」として存在感を発揮し続けている。

今シーズンの高橋の役割はベンチスタートで定着している。ただ、第1クオーターの後半に差し掛かると〝予定通り〟スターターの佐藤卓磨との交代でコートイン。「開幕前にデニスコーチから『試合の流れを変えてほしい』ということを言われていた」(高橋)というように、「シックスマン」と呼ばれるスターターに等しい重要な役割を担う。身長190cmを超えて走力も兼ね備える高橋と佐藤が代わる代わるコートに立つのは、今季のレイクスの大きな強みだと言える。

明確になった役割

「コンスタント」これが、コーチや周囲が共通して挙げる高橋の課題だ。 潜在能力の高さは日本代表候補にも召集されるなど折り紙つき。ただ、好不調の波が大きいことが「エース候補」からの脱皮を阻害していた。昨シーズンは開幕スターターに起用されながら、1カ月後には起用法がベンチかスターターか定まらなくなっていた。それが、今シーズンは役割が明確になったことで、並外れたスピードを活かした本来のパフォーマンスを安定的に発揮できるようになってきている。

「去年の今頃は何をすればいいのかが明確ではなかった。シュートは打っても入らないし、逆にボールを持ち過ぎてしまったり…。それはチームも、僕個人もそうだった。今年は勝てていないけど、流れが悪いわけではないし、やるべきことが明確になっている。コーチとも3年一緒にやっていて、求められていることがわかってきた。ディフェンスを頑張ってシュートを入れるという仕事がはっきりしているので、昨シーズンとは全然違う」

3P成功率改善で好調

高橋の調子のバロメーターになっているのがスリーポイントシュート(3P)成功率だろう。昨季は前半20試合で22%と低迷。チームの成績が上向いた終盤に巻き返したものの、序盤の不振が響きシーズン平均は28%止まり。シーズン中に成功率を気にする様子もあった。今季は成功率の向上を目標に公言していたが、第9節終了時点では40.9%で一時リーグ8位に割って入る改善が見られた(第12節終了時点では32.1%)。

課題の3Pの調子がいいことで、気分良くプレーができていることが大きいかもしれない。好調の要因について、高橋は「アツシがいることがでかい」と話す。〝アツシ〟とは今季から正式にコーチングスタッフに加わった多治美篤アシスタントコーチを指している。法政大学を今年卒業したばかりの〝ルーキーコーチ〟でもある多治美ACは、オフシーズンから若手選手の個人練習にメインで付き添ってきた。高橋の場合は「アツシは僕が(試合で実際に)使いそうなシュート練習をさせてくれた」と、実戦想定のシューティングドリルの成果が結果に表れている。

特別指定選手時代を含めてプロ4シーズン目。後輩選手が増えたことで、高橋の位置付けも年齢的、キャリア的に若手から中堅に差し掛かった。「集中すると周りが見えなくなる癖があるので、そうならないよう意識している。途中から入って流れを変えるにはどうしたらいいのか、すごく難しいけど探りながらやっている」。目線の先にあるのはチームの勝利。「このチームはもっと勝てるはずだと思っている。チームを勝たせられるように、自分の仕事をするだけだと思っている」。チームの切り札として役目を果たすシーズンを全うすれば、「エース候補」からも脱皮できるはずだ。

関連記事