2019.04.26

[ボート] 日本大学体育会ボート部 島田隼輔

「今までと同じ練習をしていては、アカンのかもしれんなぁ」
恩師・辻正人監督(瀬田工業高校ボート部)は、高校1年だった島田隼輔を見て練習を一新する決意を固めたという。 体が出来上がっている社会人や大学生が行うユーティリゼーションという負荷の高い乗艇練習を取り入れ、心肺機能を高めさせるようにした。また、辻監督が 「約25年の指導の中で最も美しいフォームを持っている選手」と話す1年先輩の野々下凌央(龍谷大学)を島田の指導役につけた。普通なら、特別扱いされた"1年坊主"をやっかむ者も少なくないだろう。 だが、島田はその圧倒的なポテンシャルと謙虚な人間性で先輩に可愛がられた。

そんな"箱入り息子"が、この春から名門・日本大学へ進学する。 レイクス・サポートアスリートの仲間入りも果たし、2024年パリ五輪へ向けて成長を加速させる。

とはいえ、1点だけ腑に落ちないのは高校3年だった昨シーズンに島田の名前が新聞やメディアに踊る機会が少なかったこと。 理由を聞くと、不調だったわけではなく、インターハイや国体といった国内主要レースに出ていなかったからだった。 同世代ではすでに敵なしの島田が戦っていたのはアジアや世界の舞台。 6月にアジアジュニアを戦い、8月には世界ジュニア、10月には4年に1度の 「ユースオリンピック競技大会」 (第3回/アルゼンチン・ブエノスアイレス)に参加。日本からユースオリピックのボート競技に参加したのは島田だけ。 不調どころか、知らぬ間に"雲の上"の人になっていたというのが正解のようだ。

ただ、島田は 「まだまだです」 と話す。 特に昨年の世界ジュニアを経験してからは、その気持ちが強くなったそうだ。
「ダブルスカル24位という結果もそうですが、とにかく海外選手とは体格がまるで違った。 自分では鍛えているつもりでしたが、言い訳できないくらいの差をあの大会で感じました」

帰国後は、練習の質を高め、今まで以上に体のメンテナンスを行い、食生活も見直したという。 結果、筋肉量が増し約8㎏増に成功。 ひとまわり大きくなった体をベースに、大学では世界と渡り合える選手へと駆け上がるつもりだ。
「オリンピックでメダルを取るという目標はブレずにやっていきたい。東京オリンピックにも出たい気持ちはありますが、現実的にはその4年後のパリ五輪を狙っています。大学でどこまで成長できるかがカギですが、ストイックになり過ぎず、ボートを楽しみながら鍛えていきたいと思っています」

大学でもメインはシングルスカル(1人乗り)をやる予定。だが、ボートの花形であるエイト(8人乗り)にも挑戦したいと島田は話す。
「高校にはエイトはないので、せっかくなので大学でやってみたい」。パリへと続くエリート街道が楽しいものになることを祈る。



島田隼輔

日本大学体育会ボート部

Profile/しまだ・しゅんすけ。 2001年1月9日生まれ、大津市出身。粟津中学校、瀬田工業高校を経て今年から日本大学へ。中学時代は 「SAGAWASHIGA FOOTBALL ACADEMY」 でプレーし、父や兄の影響で高校からボートを始めた。 飛び級でU-19日本代表に選ばれるなど早くから頭角を現し、活躍の場はすでに世界へ。

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