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2019.03.01

【対談】シーズンスポーツの可能性 河田剛氏×西村大介代表

滋賀レイクスターズの西村大介による対談連載2回目。お相手は、兄が栗東で馬の獣医をされている滋賀にゆかりのある河田剛氏。名門スタンフォード大学アメリカンフットボール部の唯一の日本人コーチで、選手・指導者を含め最もNFLに近い日本人と言われている。
そんな偉人に、西村が日本スポーツ界のたどるべき道をたずねた。

〈西村〉 滋賀レイクスターズでは4月から 「レイクス シーズンスポーツ スクール」 を開校します。 河田さんの著書にはシーズンスポーツ(マルチスポーツ)の重要性が書かれていましたが、私はシーズンスポーツが日本のスポーツ界を変えるきっかけになると考えています。 アメリカの現場を知る河田さんはどう思われますか。

〈河田〉 私もそう思います。 ただし、まず抑えておきたい大前提がある。今の日本では、世界に通用するトップアスリートが生まれ難いということです。

〈西村〉 日本人では身体的に難しいということでしょうか?

〈河田〉 アメリカは日本の国土の10倍、国民は3倍以上。 身体能力に優れた選手の数は当然、違うと思います。 それは仕方がない。 でも、決定的に違うのは日本人が自分の場所を他人に貸さない点だと考えています。 私は2008年にスタンフォード大学で見た光景が忘れられません。 大学関係者ではない他人が、学内のフィールドでフラッグフットボールをして遊んでいたのです。日本人の感覚では、全く関係ない人が自分のテリトリーに入ってくることは著しく不愉快だと思います。 もし滋賀レイクスターズがアリーナを保有していて、それを見ず知らずの人に無断で使わせますか?

〈西村〉 いえ、使わせないです。

〈河田〉 だから、一緒に見ていたアメリカ人に”フィールドに他人が入っているが、放っておいていいのか?”と訪ねました。 すると、彼は”お前は何を言っているの?”といった怪訝な表情で 「別に空いているなら、いいじゃない」 と言いました。

〈西村〉 予約もせずに、ですよね?

〈河田〉 そうです。 これは私の勝手な考えですが、日本は300年近く鎖国をしてきた島国だから、日本人には外から他人が入るのを拒むDNAが備わっているんじゃないかと。 言い方が悪いけれど、アメリカはよそ者が勝手に入ってきた立ち上げた国。 そういう違いがあるのかなと思っています。

〈西村〉 なるほど。

〈河田〉 またアメリカは子どもの頃から4つ、5つのスポーツをやる。 でも、日本は野球なら野球、バスケならバスケといった具合に1つか2つの競技を1年中やる。 総合的に考えて、日本人がトップアスリートになれる、オリンピックでメダルが取れる、スポーツでお金を稼げる、といった機会を子どもたちから奪っていることになる。

〈西村〉 社会構造として、問題があるということですね。

〈河田〉 そうです。 日本人に何のスポーツをやってきたかを聞くと、サッカーとか、バスケとか、1つの競技を挙げる人が多い。 私だったら野球とアメフトです。 仮に、私が何かで莫大なお金を手にいれたとします。 それをどこかの団体に寄付しようと考えた場合、おそらく野球とアメフトを選ぶでしょう。では、私が5つのスポーツをやっていたらどうでしょうか。 その5つに寄付する可能性が高くなる。 それだけマイナースポーツが潤う機会が増えることにもなる。 そういう素晴らしいスポーツ・エコシステムがアメリカ、あるいはシーズンスポーツにはある。

指導者の次の雇用が考えにくい
〈西村〉 アメリカではフットボールやバスケをシーズンで区切りますが、日本では”それでうまくなるの?”と言われることがあります。 実際に少年野球のコーチに”1年のうちの4ヶ月ではうまくならないよ”と言われました。 でも、アメリカではシーズンスポーツでトップアスリートが生まれています。その差はなんだと思われますか?

〈河田〉 難しい質問だね(笑)。一つ言えるのは、猛練習しないとうまくならないんじゃなくて、アメリカではうまくするのはコーチでしょという考え方だということ。 プロ・アマに関係なく、限られた時間で結果を出させるのはコーチの仕事。 そこに評価基準があるのは日本と違う点だと思います。 もしコーチがマイクロマネジメントをするなら、選手が他のスポーツをする時に、そこで何を学んできてほしいかを伝えると思います。

〈西村〉 確かに私もそう思います。 日本の指導者の多くはアマチュアで、アセスメント(査定)がないので選手がうまくならなくても、あるいはチームが勝てなくても、一生コーチを続けられる。 そこは大きく違う点でしょうね。 ちなみに日本の高校では先生が指導するケースが多いですが、アメリカでもハイスクールのコーチは学校の先生がされているのでしょうか?

〈河田〉 9割が学校の先生。 日本でも同じだと思いますが、何かしらの手当をもらう程度でやっているはず。 決定的に違うのは、雇用との結びつきがあるか無いか。 毎年、そのハイスクールからいい選手を何人も輩出していたら、その先生はすぐに報酬の高い大学に引き抜かれます。 でも、日本は公務員なので動かない。 クビにはほとんどならないかもしれないけれど、次のステップがない環境も良くないと思います。

勝利至上主義が悪いわけではない
〈西村〉 日本では部活の教育的価値がすごく高いとされています。 河田さんがアメリカで学生に指導する時、競技以外の何かを教えたりされますか?

〈河田〉 ちょっと話がそれるかもしれないけれど、先日インタビュアーに”勝利至上主義をどう思いますか”と聞かれました。 だから、勝利至上主義しか追えないと思っている日本人が問題だと思いますと答えました。 結局、日本でもアメリカでも、勝利至上主義と人間教育を並行して行えている指導者が評価されているはずですから。

〈西村〉 なるほど。 これは私見で、みんなのコンセンサスを取れたわけではありませんが、部活で学べることは礼儀正しさ、協調性、忍耐力の3つかなと思っています。 でも、アメリカにはその印象がない。 コーチと会話する時に選手が机に足を乗せて話したりもする。 でも、コーチは協調が大事だから足を下ろせとは言わない。 アメリカで学んでいた時に、コーチたちは”人間性を鍛えている”と言っていましたが、日本とは少し感覚が違うのかなと思います。 アメリカにおける人間性とは何でしょうか?

〈河田〉 スタンフォード大学の話で言うと、チーム・ミーティングの時に話すのは将来的にはどうかといった内容。ヘッドコーチがお金持ちの友人のバースデイパーティに行った話とか。 参加者約30人で、1人1分くらいコメントをしたらしいけれど、誰一人として仕事の話をしなかったらしい。 そういう話を自分の人生に生かすかどうかは別として、自分が得た情報をシェアして、選手に理想像を見せることは大事かなと思います。 こういう社会人になれとは言わないけれど、選択肢を増やせるような話を常にする。 そういう指導者が選手から尊敬されています。

〈西村〉 選手を一人の人間、あるいは大人として扱っているわけですね。 オレが教育してやらないといけない、オレがマネジメントするんだといった傲慢な感じではないと…。

〈河田〉 そう。 何も大学生だからではなく、アメリカでは幼い頃から一人の人間と認めて、本人に選択肢を与えていく。そして選ぶのは本人。 そういう接し方がスポーツでも当たり前に行われている。 日本とは大きく違います。

〈西村〉 多くの選択肢を作る意味では、やっぱりシーズンスポーツは、これからの日本スポーツ界に必要な気がします。

〈河田〉 私もそう思います。

〈西村〉 本日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました。

河田剛
PROFILE/かわた・つよし。1972年7月9日生まれ、埼玉県出身。城西大学でアメリカンフットボールに出会い、1995年からリクルートシーガルズ(現オービックシーガルズ)で活動。選手(4回)とコーチ(1回)の両方で日本一を経験。1999年の第1回ワールドカップの優勝メンバー(日本代表)でもある。2007年に渡米し、スタンフォード大学アメリカンフットボール部のボランティアコーチを経て、2011年からオフェンシブ・アシスタントに。現在、選手・指導者を合わせて最もNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)に近い日本人と言われている。

西村大介
PROFILE/にしむら・だいすけ。1977年3月18日生まれ、鳥取県出身。滋賀レイクスターズ代表取締役。京都大学教育学部卒業。大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、1996年甲子園ボウル優勝(学生日本一)。社会人時代はオールXリーグ2度受賞し、2003年ワールドカップ日本代表メンバー選出など輝かしい成績を残す。選手引退後は京都大学アメフト部のコーチ、監督を歴任し、2018年から滋賀レイクスターズへ。代表取締役を務める株式会社G-assistでは、全国の国公立大学体育会学生と企業とを結ぶ就職活動支援事業のほか、学校教育コンサルティング事業も展開中。

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