2018.10.06

[アーチェリー]皇子山中学校 渋谷樹里

滋賀の中学生として初の全国制覇。6年後のパリ五輪へ、着々と成長中。

夏の全国中学生大会で優勝したアーチェリーの渋谷樹里(皇子山3年)。 予選では唯一600点台をマークするなど強さを見せつけたが、実は大会直前に想定外のスランプにおちいっていた。改良したフォームが定着しないまま修学旅行を挟み、バランスを崩してしまった。 アーチェリーという競技の難しさが集約されたエピーソードだ。

渋谷を指導する大津商業高校アーチェリー部の中井貴久監督は「うわぁ当たらんようになってるわ〜(笑)」 と思ったと話す。 だが、今年の全中は 「絶対に勝たせたかったので、全中用のフォームで大会に挑ませた」 と振り返る。

普段、渋谷は、6年後のパリ五輪と滋賀国体を視野に入れ、高校生以上が行う70mの距離を練習している。 中学は60m。 中井監督は「パリまでの逆算で渋谷には70mを射たせてきました」 と話す。

だが、先述したように、渋谷はスランプに。 「別の選択肢を作るため」 に全中を優勝させたかった中井監督は全中用のフォームに踏み切ったそうだ。

選択肢とは、オリンピックや国際大会で活躍できる選手育成を目指したJOCエリートアカデミーへの道である。 全中優勝はそのための、いわば”名刺がわり”だった。 渋谷はその全中をこう振り返る。
「全中の決勝は接戦になって…あせりました(笑)。 それでも耐えて、なんとか最後まで崩れずに戦えた。自分にとっては大きな大会での初優勝ですし、すごく大きな経験になりました」。

この優勝によって、11月のエリートアカデミーの1次試験を受けられるようになった。 渋谷は 「全中のような粘りをみせて、なんとか突破したい」 と笑顔を見せた。 合格すれば、滋賀初のJOCエリートアカデミー生(東京・足立新田高校生)になる。 だが、見方を変えれば、恩師・中井監督のいる大津商業の大きな壁にもなる。
「渋谷を高校で指導できないのはちょっと寂しいけど、合格してほしいですね。 インターハイで渋谷のいる足立新田に勝って優勝する…、それはそれでやりがいもある(笑)」

そう言って中井監督は渋谷の背中に視線を向けた。

渋谷 樹里

皇子山中学校

Profile/しぶや・じゅり。2003年4月29日生まれ、大津市出身。比叡平小学校を経て、皇子山中学校へ。現在3年。小学5年から参加した県の次世代アスリート発掘育成プロジェクト「レイキッズ」(第一期生)の活動を通してアーチェリーと出会った。中学進学後も大津商業高校で練習を続け、昨年は滋賀県の中学生とした初の全国中学生大会に出場。2度目となった今年の全中では見事優勝を果たした。

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