2018.06.02

【SKETCH of 中学スポーツ】中学スポーツの現在地④

「チーム滋賀」 で育てる

滋賀県の中学スポーツを語る上で、外せないのが陸上競技だ。 今をときめく男子100mの桐生祥秀(日本生命)をはじめ、棒高跳びの我孫子智美(滋賀レイクスターズ)、円盤投げの湯上剛輝(トヨタ自動車)、女子マラソンの桑原彩(積水化学)、女子100mの壱岐いちこ(立命館大学)など多くのトップアスリートを輩出。 昨年は双葉中学が男子4×100mリレーで日本一(中学新)になるなど、滋賀の中学陸上は全国トップレベルにある。

だから”外せない”のではなく、独特の活動が面白いから外せない。

興味深い事例の一つが 「チーム滋賀」という考え方だ。 簡単に言えば、滋賀全体でいい選手(人間)を育てようという取り組み。 年に数回行われる練習会では、専門の指導者が自校以外の選手にアドバイスなどを行うという。 例えば、自校には長距離専門の顧問しかいないとする。 でも、跳躍を教えてほしい。 そういう選手に対して、跳躍を得意とする他校の顧問が練習会などで面倒を見る。ここに変な垣根はなく、純粋に子供たちを育てたいという想いがあるだけだ。

滋賀県中体連陸上専門部の吉田享史副委員長はこう話す。
「滋賀は小学生年代にいい指導を受けている子が多い。 それを高校へつなげるのが私たちの役割。 だから、先生同士の助け合いが大切になる。 練習会は、子供たちだけではなく、先生同士の交流の場でもあるのです」

これはいいモデルケースだ、と他府県から練習会を視察に来ることもある。もちろん、他競技でも同じ取り組みができるとは限らないが、考え方としては面白いのではないだろうか。

週休2日は問題ない

近年、陸上選手のメディア露出も増え、国内の競技人口は増えている。 滋賀も中学生の競技人口は増えているという。その中で、課題は指導者不足にあると吉田副委員長は話す。
「どうしても選手が多くなると、指導者の目が行き届きにくくなる。 競技面に限らず、性格なども含めて個々にあった指導ができない場面が出てくる可能性もある。 外部コーチや地域の人材などとの連携がより求められるのかもしれません」

学校間の横のつながりだけではなく、地域との縦のつながりを求められる時期にきたのかもしれない。

人手不足という点では、部活の週休2日制はいい方向ではないだろうか。 吉田副委員長は 「陸上において週休2日は、子供のためというより先生たちの働き方改革の側面が強い」 と言う。

「陸上には1週間の流れがある。 土曜に試合があったら翌日は休み。 月曜から金曜の平日の中には、激しく練習する日と強度を落とす日がある。 その強度を落とす日を平日の休養日にあてれば今までと変わらないサイクルになると思います。 だから、陸上では週休2日は先生たちのもの、という感じになるんじゃないですかね」

部活ガイドラインに影響を受ける競技もあれば、影響が少ない競技もある。学校や個人といった単位が変われば、また捉え方も変わる。 結局、ガイドラインの是非を問う答えは出てこない。

その中で、強いて答えを導くなら、勝ち負けより”伸びしろ”を増やす方がいいということ。 中学スポーツの現在地は大人への過渡期である。 できるだけ多くの選択肢を子どもたちに用意するのが、この時期には大切だと思われる。

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