2018.06.02

【SKETCH of 中学スポーツ】中学スポーツの現在地②

”J”より歴史のあるリーグ

1993年発足のJリーグよりも歴史がある 「日本クラブユースサッカー選手権大会」。 1985年の創設初年度から滋賀大会も実施され、今年で第33回大会を迎えた。 日本代表の乾貴士(レアル・ベティス)もセゾンフットボールクラブ(中学生)時代にこの大会でプレーしている。 湖国フットボールの一つの大きな流れを作ってきた。

今年の参加は26クラブ。 4つのブロックに分かれ、1ヶ月以上にわたって行われた。 5月12日の決勝戦では 「FC湖東」が 「FC.SETA 2002 SHIGA」 を3-2で制して優勝。 3位決定戦では 「FostaFC」 が 「ラドソン滋賀」 を3-1で下した。 このトップ4に加え、関西サンライズリーグで戦う 「MIOびわこ滋賀ジュニアユース」 が関西大会に出場。 勝ち進めば、”J下部”と略称されるJリーグクラブの下部組織チームなどと、全国切符をかけてしのぎを削ることになる。

だが、滋賀県クラブユース連盟の土川晶夫理事長は 「どこが滋賀大会を制したかはあまり問題ではない」 と話す。
「優勝チームは毎年のように変わりますし、たまたま今年はどこどこが強かったというだけなので。 人数の少ない年もあれば、多い年もある。 いい選手が集まったから勝てるというものでもありませんからね」

指導者は目的を勝敗には置いていないと土川理事長は話を続ける。
「どのクラブも強いチームを作るのが目的ではなく、どうやっていい選手を育てるかを意識して指導している。18年間ずっとこの大会を見てきて、私はそう感じています。 そして高校にどうつなげていくか。 指導者はそこに覚悟をもって取り組んでいる」

サッカー馬鹿になるな

中学校の部活とクラブチームの違いは何か。 学校のグラウンドを使える部活の方が設備面では恵まれているように思われる。 週休2日になったとはいえ、週3〜4日のクラブチームに比べれば、部活の方が練習時間も確保できる。違いがあるとすれば、やはり指導者になるだろうか。

もちろん、部活の顧問に問題があると言う意味ではない。 新しい指導法や戦術などを吸収し、教え子たちにあった練習メニューを作成するなど熱心な顧問も多い。 だが、いかんせん学校には異動がある。 外部コーチがいる部活は別だが、3年間、同じ指導者に教えてもらえるとは限らない。 ここに部活とクラブチームの違いがある。

特に中学サッカーは大きな過渡期を迎えるため指導者は重要だ。 ボールサイズが大人と同じ5号球になり、ピッチも、ゴールも大人と同じサイズになる。中学1年と中学3年の体格差も大きく、小学生の頃に身につけたテクニックが通用しない場面も出てくる。 そういう大きな変化の中で、壁にぶつかり、スランプに陥る可能性もある。

そんな大事な時期だからこそ 「子供たちがサッカー馬鹿にならないように」と、土川理事長は警鐘を鳴らす。
「中学から大人と同じ環境でのサッカーが始まる。 でも、まだ大人にはなりきれていない。 そういう微妙な時期だから、サッカー以外のことも大事にして指導してほしい」

なんとなく部活は教育の枠組みの内側、クラブチームは外側にあるイメージだが、決してそうではない。 戦うステージや競技レベルは違うが、どちらも人間育成という点では同じだ。 足がつったら敵味方は関係なく解放してやるのだ。

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