2021.12.16
悔しさが詰まった全国2位 だが、壮大な夢の始まりでもある 【ボート】 北川裕基 びわ湖ローイングクラブ 長浜市立北中学校
自宅エルゴでフォームに磨き
長浜市立北中学3年の北川裕基(びわ湖ローイングクラブ)が、7月の第41回全日本中学選手権競漕大会男子シングルスカルで準優勝に輝いた。中学2年はコロナ禍で大会中止が相次いだ中で、陸上でボートを漕ぐ練習ができるエルゴマシンを購入し技を磨いた。
「コロナ禍で大会が中止になっただけではなく、琵琶湖漕艇場(大津市)で練習する機会も減りました。地元の長浜ではボートに乗る環境がなく、自宅用にエルゴマシンを買ってもらいました」
エルゴマシンでスキルを探求し、それを週末の琵琶湖漕艇場で体に馴染ませていく。このサイクルを繰り返すうちに「水上でのフォームが安定してきた」という。そして中学2年の秋には県内で無敵になっていた。
もともとセンスはあった。普通は沈して当たり前のシングルスカルをびわ湖ローイングクラブに入って2日目で上手に操った。ボート競技に必要な心肺機能は、小学生から続けている陸上競技で培われていた。ネックだったのはスキルを磨く時間の少なさと長浜と大津という距離のハンデ。それをエルゴマシンで埋められたことが、全国での飛躍につながった。
将来は海外で競技をしたい
全国大会の決勝では、同じびわ湖ローイングクラブの仲間(八木颯一)が隣のレーンにいたことで「緊張はしなかった」という。それもあって好スタートを切った北川はレース序盤で首位をキープした。だが、途中で足に張りを感じ、レース半分の500mで優勝した鳥取の選手に抜かれた。ラスト200mでは逆足にも張りを覚えた。それでも「体が壊れてもいい」という気持ちで漕ぎ続けた。
ボート競技では〝乳酸が溜まってからが本当の勝負〞と言われることがある。両足が張ってからの北川のローイングは、まさにそういうものだった。結果は1.3秒差の準優勝。次につながる大きな経験になったが、本人は今でもかなり悔しい様子だ。
「2位のアナウンスを聞いた時はうれしかった。やったーって感じ。でも表彰台の真ん中に別の選手がいるのを見てだんだん悔しくなった。決勝は自己ベストより10秒ほど遅かった。自己ベストを出していれば優勝できたかもしれないと思うと余計に悔しくなった」
だが、競技人生はこれで終わりではない。むしろ夢へのスタートラインに立ったと言うのが正解だ。
「将来はニュージーランドに留学してボートを続けたい。いつか金メダリストのハミッシュ・ボンド選手と一緒のクルーで漕ぎたい」
きっかけは今夏だった。大津市で東京2020オリンピック事前合宿を行っていた強国ニュージーランド代表の力強いローイングを目の当たりにした。「これが世界の速さか」。その中心選手であるハミッシュ・ボンドに憧れた。いつか一緒に…。この壮大な夢に向けて、高校ではまず全国制覇をめざす。
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北川裕基
びわ湖ローイングクラブ
きたがわ・ひろき。2006年11月7日生まれ、長浜市出身。小学4年から陸上競技をはじめ、6年の時には4×100mリレーで全国5位に。中学校では陸上競技部に所属し、3年時には800mで近畿大会に出場している。だが、メインはあくまでボート競技。中学から本格的に競技をはじめ、3年生の今年は第41回全日本中学選手権競漕大会男子シングルスカル2位に輝いた。174㎝ 60㎏。