2025.10.08
自信を持ってプレーする
昨年7月に東レアローズ滋賀に加入した田代佳奈美は2度のオリンピックを経験する名セッターだ。生まれ故郷である滋賀のチームでプレーしたのは7年ぶり。まずはアローズ復帰の理由を聞いてみた。
〈Q〉 アローズ復帰の経緯を教えていただけますか。
「前回、アローズを退団した2018年に入れ替わりで関(菜々巳、日本代表、イタリア・UYBAブスト・アルシーツィオ)が入りました。関の活躍もあってしばらくはアローズもVリーグの決勝に残っていたりしましたが、ここ数年は勝てなくなっていました。海外に居ても耳に入ってきていたので気にはなっていました。そして昨年、SVリーグが始まるタイミングでアローズから声がかかった。アローズで一緒に戦っていた越谷(章)監督やリベロの中島(未来)もいましたし、何よりお世話になった中道(瞳)さんもコーチとしていらした。そういう方に少しでも恩返しができるならと思って戻ってきました」
〈Q〉 滋賀出身で元日本代表セッターの中道コーチとタッグを組む。県民にとっては夢のようでした。
「2009年に入団した頃、中道さんはよく代表に呼ばれていました。そんな方と一緒に練習して間近でプレーを見られる。若手の私にとってはすごく恵まれた環境でした。今はコーチと選手という立場ですが、関係性は変わらないですし、私の考えも理解してくださっている。昔も今も、私の良さを引き出してくれる人です」
〈Q〉 SVリーグ初年度の昨シーズンは7位でチャンピオンシップに進出しました。
「選手やスタッフがガラッと入れ替わった1年目だったので、チームとしては完成されていなかったと思います。連敗もあれば、逆に連勝もあるという波のあるシーズンでした。その中で、終盤の12連勝には手応えもありました。スタメンの選手だけではなくて、交代選手もコートに入る際は試合の雰囲気を変えようという強い意志が見られました。そのあたりは成長できた部分かなと思います」
〈Q〉 今シーズンの目標は優勝だと思います。その道のりの中で、田代選手の個人目標は?
「私だけではなく、1人ひとりが自分の役割を果たすことがチームの勝利につながると思っています。今のアローズは若い選手も多いですし、そういう選手に自信を持ってプレーしてもらうためには、まずは私が自信を持ってプレーすることが大切だと思います。自分がやりたいバレーをしっかりとコートで表現できれば、結果は後からついてくると思います」
日本代表や海外クラブなどで得た経験を、田代はすべてコートで表現する。今シーズンも彼女のゲームメイク力に注目したい。
誰が入っても同じバレーを
SVリーグ初年度の昨シーズンを7位で終えた東レアローズ滋賀。選手やスタッフが大幅に入れ替わった中で、チャンピオンシップ進出は一つの功績と言えるだろう。だが、目標はあくまで優勝である。越谷 章監督にまずは昨シーズンの感想を聞いた。
〈Q〉 レギュラーシーズン7位。監督の評価をお聞かせください。
「スタッフと選手が半分以上も入れ替わった中で、少しずつ選手を知りながらチームを作っていきました。それもあってシーズン前半は総合的な力を発揮するのは難しい面がありました。なので、とにかくチャンピオンシップに進出することを念頭に戦っていました。チームが機能しはじめたのは2月頃からだと思います。かなりスロースターターでしたので、チャンピオンシップに進出できたことは非常によかったかなと思います。 ただ、準々決勝の2戦目でNECレッドロケッツ川崎を追い詰めながら敗れてしまった。3戦目に持ち込めば何が起きるか分からなかったですし、そこは詰めが甘かったと思っています」
〈Q〉 得点ランキングトップのシルビア・チネロ・ヌワカロールが移籍。心配する声もありますが…
「シルビアがチームを離れて、どう戦うかはすごく重要なテーマだと思います。でも、いなくなったからといって自分たちのプレーができないのでは非常に良くない。基本は誰が入ってもアローズの戦いができることをめざしていますので。それを踏まえて、今シーズンのポイントは果敢に攻めてチャレンジしていく姿勢だと思っています。我々の根っこにある粘り強さとか、必死のつなぎとか、そういうものを何回も何回も出して点数を取る姿勢が大事だと思います。シルビアとはタイプが異なりますが、新外国籍選手のルシール(・ジケル)もいい選手ですし、アローズ向きだとも感じます。今シーズンの目標は優勝ですが、まずは上位4つに入ること。ホームで勝率は高いですし、しっかりとチャンピオンシップのホーム開催権を勝ち取りたいと思います」
新加入のジケルに注目
リーグ最多得点のヌワカロールが抜けた今シーズン。代わりにやってきたルシール・ジケルは2022年にヨーロッパリーグでベストスコアラー賞とMVPに輝いた実力者だ。7月にはフランス代表としてネーションズリーグも戦っている。フランスリーグ時代に対戦した経験があるセッター田代は「アタックはもちろん、ジャンプサーブ、レシーブもうまい。何でもできる器用な選手」と彼女を評す。ヌワカロールよりも最高到達点は低いが、ジケルが入ることで攻撃のバリエーションが増える可能性も。チームとして彼女を活かせれば、開幕ダッシュもありそうだ。
©TORAY ARROWS SHIGA
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左:越谷章監督 右:田代佳奈美
東レアローズ滋賀
左:1979年6月12日生まれ、神奈川県出身。大学卒業後に東レアローズ(男子)に入団し、2012年までプレー。2012年には8年ぶりに日本代表に招集されロンドンオリンピック最終予選に出場。選手引退後の2012年に東レアローズ(女子)のコーチに就任。2020-21シーズンから監督へ。 右:1991年3月25日生まれ、滋賀県栗東市出身。草津はやぶさジュニアでバレーをはじめた。古川学園高校では春高バレー準優勝、アジアユース選手権優勝などの輝かしい成績を残し、2009年4月に東レアローズへ。ルーマニアやフランスなどヨーロッパでもプレー。そして2024年7月にトルコのガラタサライから東レアローズ滋賀に加入。7年ぶりに故郷のチームでプレーした。また日本代表としては2016リオデジャネイロオリンピックや2020東京オリンピックに出場。173㎝