2023.11.01
【TOPS】〝あと1点〞から逃した優勝。今季こそは…。中島未来
紆余曲折を経てキャプテンに
名門・九州文化学園高校のスパイカーとして春高バレーと国体の2冠を達成した中島未来は、2016年1月に東レ アローズ(アローズ)の内定選手となり、卒業後に正式加入となった。
こう書くと、中島は現在もバリバリのスパイカーのようだが、アローズにはレシーブ力を買われてリベロとして入った。
「最初はすごく複雑でした。スパイカーだと自分で点数が取れますけど、リベロはミスしても自分では取り返せないですし、どこかでスパイカーをしたいという気持ちもありましたから。リベロとして覚悟が決まったのは、ここ3年くらいの話なんです」
きっかけはアローズを辞めたいと考えた時だったという。
「自分がリベロとしてやっていけるのかという不安があり、どう頑張ればいいか分からないあやふやな自分が嫌で、アローズを辞めたいと考えるようになりました。続けるかどうかで家族とも喧嘩をしましたし、いろんな方にも相談しました。
その時に、JTマーヴェラスで活躍されていたリベロの小畑真子さん(九州文化学園の先輩。22年5月に引退)を見て、こういう人になりたいなと思いました。そこでリベロをやる覚悟が固まりました」
覚悟が決まった後は、とにかくチームメイトと積極的にコミュニケーションを取るように意識したという。
「リベロは常にみんなを見ないといけない立場ですが、実は人見知りで人と話すことが好きではありませんでした。なので、まずはみんなと積極的にコミュニケーションを取るように意識しました。だんだん慣れてきて、逆に今は人と話すことが自分の強みになっているくらいです(笑)」
弱点を強みに変えた中島は昨シーズンからキャプテンを務めている。立場が人を作るではないが、さらに人として変化があったようだ。
「自分のプレーが悪い時は自分に集中したいですが、キャプテンはそれができないので苦しい時もありました。勝つためにチームをどうすればいいかを常に考えなくてはいけないので、眠れない日もありました。
でも、1年やってみて自分がすごく変われた気がします。チームが強くなるためには個々が強くならないといけない。なので、どんな時でも一人一人がチームのためにアクションを起こしてほしいと言い続けてきました。でも、自分が率先してやらないと説得力がないので、自分の行動を意識するようになりました」
心配の声を優勝で跳ね返したい
アローズは2011│12シーズンのVプレミアリーグ優勝以降、レギュラーラウンド1位は3回あるが、ポストシーズンで敗れて優勝を逃してきた。
V.LEAGUEに変わった2018│19シーズン以降は5シーズンで準優勝が3回。昨シーズンはNECレッドロケッツとのファイナルで敗れて悔し涙を流した。とはいえ、セットカウント0│2から追いつき、最終セットではあと1点で優勝というところまで相手を追い詰めている。
敗れたものの、中島は「チームの成長を実感できた」と振り返る。
「12月の天皇杯・皇后杯(天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会)の決勝で敗れた後、選手だけでミーティングを開きました。そこで私は泣きながらみんなに訴えました。やる気のない選手がいたからです。私も試合に出られずにモチベーションが下がった経験があるので気持ちはわかりますが、優勝をめざすチームのキャプテンとしては見て見ぬふりはできません。嫌われる覚悟で厳しいことも言いました。そこからみんなの意識も少しずつ変わり、チームもだんだん良くなっていきました。結果的にファイナルで負けましたが、全員が自分の力を出し切れたことはよかったと思っています」
今シーズンは〝足りなかったあと1点〞を追求することになる。だが、メンバーが大幅に変わった中でファンからは心配の声も挙がっているようだ。
「石川真佑選手(イタリア/イル・ビゾンテ・フィレンツェ)やナヤ・クラン選手(引退)が抜け、今シーズンのアローズは大丈夫かな?と心配されている方も多いと思います。実際にSNSなどを通じてそういう声も聞きました。今シーズンのメンバーにはまた違った良さがあるのに…。すごく悔しかったですし、今シーズンはなおさら結果を残したい。だから、優勝したい」
今シーズンのアローズは滋賀で6試合を戦う。ぜひ会場で、日本一をめざすチームに熱いエールを送ってほしい。
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中島未来
東レアローズ
1998年3月17日生まれ、長崎県出身。九州文化学園高校から2016年にVプレミアリーグの東レ アローズに加入。ポジションはリベロ。2018-19シーズンは33試合121セットに出場し、準優勝に貢献。 2022年の第70回黒鷲旗全日本選抜大会ではチームを優勝に導き、ベストリベロ賞にも輝いた。2022年度からキャプテンに就任。169㎝、63kg。ミックネームはミク。