2024.01.01

〝大泣き〟の先にV3、そして世界。山本亜美

飛躍の1年。はじまりは決勝30分前

滋賀アスリートで、23年に最もブレイクしたのは400mHの山本亜美(立命館大学3年)だろう。

日本陸上3連覇を達成し、国際大会ではワールドユニバーシティーゲームズやアジア陸上、アジア大会、世界陸上と大舞台を駆け抜けたからだ。

「国際大会は今年のユニバーが初めて。
まさか自分が日本代表として世界陸上に出るとは思ってもいませんでした」

国際大会というハードルを次々と超えていく中で、山本は国を代表する重みや世界との距離も感じるようになった。

「代表のユニホームで世界陸上のレーンに立った時、やっぱり日本陸上とは違う感覚でした。自己ベストを出しても準決勝や決勝に進めるかどうかも分からない世界。すごい経験をさせてもらいました」
 
だが、今年最も印象に残っているのは日本陸上だという。
4回目の出場だが、いつもとは違って「吹っ切れる瞬間」が訪れず、不安いっぱいで過ごしたという。

「2位までに入れば日本代表になれる。それがちらついて…。勝ちに行かなくてはいけないと思ってしまった。不安はいつもありますが、たいていは前日などにふと〝大丈夫、勝てる〞と吹っ切れる瞬間があるんです。
でも、今年はそれが来ないまま決勝を迎えた。不安がマックスでスタート地点に向かう通路で両親や仲間を見て思いっきり泣いてしまいました」
 
ただ、この号泣で山本は吹っ切れる。「泣いてスッキリして脚が軽くなりました(笑)」。

レース30分前の出来事だった。

結果的に大泣きが引き金となって世界陸上まで駆け上がる。だから人生はおもしろい。

山本亜美

立命館大学

草津市立山田小学校、松原中学校、京都橘高校を経て立命館大学へ。現在3年生。高校から400mH(ハードル)を始め、2年時には茨城国体・少年女子共通400mハードルで優勝(京都高校記録)。3年時には日本選手権で4位入賞。2021年の日本選手権で初優勝し、22、23年と合わせてV3を達成。23年アジア陸上選手権で銅メダルを獲得。23年世界陸上にも出場した。

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