2023.11.01
【TOPS】次はBリーグを沸かせる。川真田紘也
自分に足りないものが明確に
2024年のパリオリンピック出場権がかかった8月の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」(ワールドカップ)。
バスケットボール男子日本代表(通称AKATSUKI JAPAN)は予選グループで格上のフィンランド代表から金星を挙げるなどの躍進を続け、最終的にアジア最高位(19位)でオリンピック出場権を獲得し、日本中を沸かせた。
その感動の渦の中に滋賀レイクスの川真田紘也も居た。
ファイト溢れるプレーだけではなく、赤髪や練習生からワールドカップメンバーに残ったエピソードなどから人気漫画『スラムダンク』の主人公になぞらえて〝リアル桜木花道〞としても話題に。
レイクスの愛されキャラは、今や日本の愛されキャラとなった。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの川真田が、なぜB2リーグに降格したレイクスに残留したのだろうか。その真相を聞く前に、まずはワールドカップを振り返ってもらった。
【Q】ワールドカップ前の代表合宿は相当ハードだったと多くの選手が口にしています。川真田選手はどうでしたか?
基本は2部練習だったのでキツかったです。
でも、ワールドカップのメンバーに選ばれるための大事な合宿ですし、トムさん(トム・ホーバスHC)がそれをやろうと言ってやっているわけですので、当たり前のことだと思ってやっていました。練習内容? それは詳しくは言えません(笑)。まぁ、でもボックスアウトなどの基礎的な練習が多かったです。それを行った上で、トムさんのフォーメーションを使って5対5などをやる感じでした。
【Q】タフな合宿を乗り越えて最終メンバーに残り、実際にワールドカップを戦った。代表活動を通して得たものは?
代表にはすごくレベルの高い選手たちが揃っていて、彼らと一緒に試合ができたことは自分にとってプラスしかないです。もちろん、次のパリオリンピックも代表に選ばれたいと思っているので、そこに向けて自分に足りない技術やフィジカルが明確に分かったのも大きいと思っています。
この1年で何をすればいいのかが明確になりましたから。それに自分の代表経験がレイクスを助けることにもつながると思ってやっていました。まぁ、個人としてはもっと試合に出たかったですけど、チームとしてフィンランド代表にも勝ちましたし、目標だったアジア最高位も達成できました。自分の中では一つのゴールに辿り着いた感じです。
【Q】ワールドカップ開幕前と後では日本の盛り上がり方が変わりました。川真田選手はどう受け止めていますか。
初日に渡邊雄太さんが空席の話をされて、次からはみんなが来てくれて応援してくれました。
SNSにも知人からたくさんコメントが届きました。もちろん、優勝したわけではないですけど、日本のレベルと人気が一つ上がった印象を受けています。パリオリンピックでも活躍すれば、もっとバスケット熱は上がってくると感じました。
レイクス残留の思い
では、レイクスの話に。B2リーグに降格したこともあって、チームに残るかどうか悩まれたと思います。
そうですね。もちろん、悩みました。でも、自分がいる時にチームをB2リーグに落としてしまった責任も感じていますし、メンバーは変わりますけど、自分たちの力でB1リーグに戻したいと思ったので残留を決断しました。
【Q】B2リーグ降格が決まった最終節の京都ハンナリーズ戦はあまり出場時間がなかったですが、どういう風に試合を見ていましたか。
B1残留に向けて、勝つのがマストな試合だったので、みんな全力で戦っていました。
でも、うまくいかなかった。ファンの皆さんの前でああいう結果になってしまったので、試合後は何とか次は皆さんと一緒に喜びたいという気持ちになりました。
【Q】そういう経験をすると、人生観は変わるものでしょうか?
どうでしょうか。自分のバスケット人生にはあまり勝った経験がなかったので。
中学・高校は地元・徳島にいましたが、県内の強豪にいたわけでもないですし、全国大会の経験もない。天理大学では全日本インカレには出場しましたけど2回戦で負けました。
敗戦ばかりを経験してきました。その中でもあの京都戦の敗戦がこれまでの負けとは感覚が違いました。プロとして人生がかかっている試合だったからです。
【Q】レイクスとの契約更新が発表された後、ブースターからも多くのメッセージが届いたのではないですか?
先ほどからレイクス残留の話をカッコよく話していますけど、正直、相当悩みました(笑)。
契約更新のリリースも一番遅かったでしょ。昨シーズンは試合にも出ていましたから、ブースターさんの皆さんからも残ってほしいという声もいただいていました。残留すると決まって暖かいメッセージもいただきました。素直にうれしかったです。
【Q】今シーズンのチームを見て、どんな感想をお持ちですか?
毎年そうですけど、今年も明るいなぁと思っています。それに山崎凜とか、湧川颯斗とか若い選手もいますからフレッシュな印象がありますね。また、外国籍選手も含めて全員で話し合うような習慣がすでにできていたので、一枚岩のような雰囲気を感じています。
【Q】ポジションを見ていると、レイクスの中で川真田選手だけが他のポジションと掛け持ちなしのセンターです。センターへのこだわりを教えてください。
まず、センターが好きです(笑)。日本人ビッグマンはよく4番などの上のポジションにコンバートすると思うんですけ
ど、自分はセンターでやるしかないと思っています。4番にコンバートできるほど3Pシュートやドリブルがうまくもないですからね。そういう意味では、センターが好きでよかったですし、〝好き〞がこだわりです。
【Q】代表でもそうかもしれませんが、今シーズンのレイクスでは3Pシュートを求められるかと思います。
まぁ、自分も打てないわけではないですよ(笑)。
昨シーズンも3Pシュートは2本決めていますから。でも、今シーズンの外国籍選手は何でもできる選手ばかりなので、例えば彼らを3番などの上のポジションで使って、僕とジャスティン バーレルをセンターに置けばビッグラインナップにもなります。そういう使われ方を想定しレイクスに残ったという部分もあるので、今シーズンもセンターにこだわってどんどん自分の存在価値を出していきたいと思います。
開幕ダッシュが大切
【Q】佐賀バルーナーズ(特別指定選手)でB2リーグを経験されていますが、どんなイメージをお持ちですか?
もちろん、B1リーグよりはレベルは下がると思います。でも、すごく下がるわけではない。
それに僕が経験したのは3年前なので、今はもっとレベルが上がっていると思います。だから、簡単には勝たせてくれないでしょう。でも、僕たちは最短でB1リーグ昇格を狙っていますから、恐れずに戦っていきたいと思います。
【Q】そのためには開幕ダッシュが一つのポイントになりますか?
そうですね。出だしは大切だと思います。レイクスがこれだけできるんだというのを最初に見せることができれば、そのまま勢いに乗れると思います。仮に、ほんと仮にですけれど、開幕5連敗とかしたらメンタル的に「今年もかぁ」ってなってしまうじゃないですか。だから、やっぱり開幕5試合くらいは勝負所だと思います。
でも、矛盾しますが開幕5試合だけを見ていても仕方がないとも思います。最後の1ヵ月で自分たちのしたいバスケットをダビ(ダビー・ゴメスHC)の元で遂行できるかが大事ですし、そこに向けてどれだけ準備できるかが大切だと思います。
【Q】では、個人目標を教えてください。
実は裏目標があるんです。こだわっているのはEFFです。
EFFはポジティブな(得点+リバウンド+アシスト+スティール+ブロック)からネガティブな(フィールドゴールの失敗+フリースローの失敗+ターンオーバー)を引いた数字です。
僕はスクリーンとか数字に残らないプレーをすることが多いんですけど、チームとしてはプラスαとして僕が得点やリバウンドで数字を残した方が助かると思うんです。
いつも1試合4点とかですからね。なので、点とかリバウンドとか、アシストなどの数字が残る項目をトータルして10~15を裏目標にしています。例えば、得点8、リバウンド5で13とか。代表をめざす上でも、裏方だけではなくどんどん表に出る活躍をしていきたいと思っています。「裏」なのであまり表には出したくなかったんですけど、出てしまいましたね(笑)。これが最低のノルマです。
代表でも色々と試合で使っていただいて、僕の裏方の仕事で助かった部分もあると思うんですけど、バスケットというスポーツをする上ではリバウンドは取らないといけないです。表の目標を作って、個人的に成長しないと代表には残れない。リバウンドを取るなんて当たり前の目標なんですけど、そこが自分は出来ていなかった。先ほど話した〝自分に足りないもの〞もそこだと思います。
【Q】代表では赤髪が話題にもなっていました。昨シーズンのレイクスでは青髪でしたが、今シーズンは何色に?
赤です!1シーズン1カラーと決めているので。ブースターさんの中には青を希望されている方もいるみたいですが、2年連続で青はないかなと思っています。でも、人の気持ちは変わるものですから、ホームゲームを楽しみにしていてください!
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川真田紘也
滋賀レイクス
1998年6月16日生まれ、徳島県出身。城南高校、天理大学、佐賀バルーナーズ(特別指定選手)を経て、2021-22シーズンから滋賀レイクスへ。202㎝/102kgという恵まれた身体を持つ日本代表のビッグマンは、今年8月に開催されたワールドカップで活躍。ニックネームはマイキー。