2023.09.01

ロウイング体験会 

滋賀の高校生がボートで交流。湖上に〝障がい〞の垣根なし。

競技体験+αに期待して

6月に関西みらいローイングセンター(滋賀県立琵琶湖漕艇場)で開催された「ロウイング体験会」(計2回実施)は少し変わっている。健常者と聴覚に障がいのある高校生が同じボートに乗ってオールを漕いだからである。

企画したのは、日本唯一の競技用ボート製造メーカー桑野造船が中心になって展開する「NPO法人地球で游ぼう」。理事の今村拓也さんは今回の経緯をこう説明する。

「昨年に聾話学校高等部の生徒さんだけで体験会を開きました。聾話学校の先生からは健常者と関わる機会が少ないと聞いていましたので先日、滋賀短期大学附属高校スポーツ健康コースとご縁があって、一緒に何かできたらいいですねという話がありました。それなら一緒にボートに乗ろうかと。ロウイング競技を体験するだけではなく、いろんな学びがあるのではないかと期待しました」

桑野造船の小澤哲史代表取締役や地元御殿浜 RCのメンバー滋賀レイクスターズロウイングクラブの杉藤洋志コーチ、岡田遼太選手ら競技に精通した方々の協力も受けながら、万全のバックアップ体制で体験会は行われた。

手話と工夫で呼吸を合わせる

普段は補聴器のおかげで日常会話に問題がない聾話学校の生徒たちだが、ボートの上では補聴器なし。
水没すると壊れてしまうため、補聴器を外して乗艇した。

音の無い世界でオールを漕ぐのは難しく、手話に不慣れな健常者と呼吸を合わせるとなるとさらに難易度は上がる。コックスの手話による指示があるとはいえ、聾話学校の西尾羅偉くん(3年)は「手話で合わせるのが難しかった」と話す。

「でも、滋賀短期大学附属のみんながいろんな方法でコミュニケーションをとってくれて、だんだんタイミングが合ってきました」。

滋賀短期大学附属の北村美桜さん(2年)は
「手話も少し覚えましたが、それだけでは伝えられないことがいっぱい。なので、いつもより大きな声で話すようにしました」と振り返る。
同じボートに乗った宮園紗希さん(2年)は
「湖上では音が聞こえる自分たちがフォローしないといけないと感じた。でも、それは地上でも同じ。それを肌で感じられたことは大きいですし、この経験を今後に活かしていきたい」と話した。

逃げ場のないボートの上だからこそ、お互いが協力しあえた部分もあるだろう。
体裁は競技体験会だが、その枠組みでは収まらない〝学びの場〞があった。

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