2021.12.05

笑顔を貫き、全国の頂点へ "名門"が6年ぶりに奇跡 【アーチェリー】 木内るう 勝見麗 原田愛実 塩見茉央 

延長の末に勝った準決勝

今夏、大津商業高校アーチェリー部が6年ぶりにインターハイ女子団体で頂点に立った。決勝は3セット連取による完勝で、主将の木内るう(3年)は「準決勝の激闘を勝ち切った。その勢いを決勝にもっていけたのが大きかった」と勝因を話す。

その言葉通り、今大会の山場は準決勝だった。
相手は千葉英和高校。セットカウント4-4で並び、勝負の行方はシュートオフによる延長戦にもつれこんだ。3人が1本ずつ撃ち、その合計点で争われる。1人のミスが命取りになる緊張の場面。最初の原田愛実(2年)が8点(最高10点)の好得点で流れを引き寄せた。続く木内も8点。そして最後の勝見麗(2年)がど真ん中の10点。決勝へ最高の弾みをつけた。

勝見は「決めるしかない。その覚悟で撃ちました。10点、よかったです」と、あの瞬間を思い出したようにホッとした表情を見せた。

〝だるまさん〞も笑顔に

今年の団体メンバーは「笑顔で撃つ」をテーマに掲げた。勝見とともに中学から大津商業でアーチェリーを続けてきた原田は「どんな場面でも笑顔で撃つことができれば、いつも通りの力が出せる。それを忘れないために、みんなで考えて今年のテーマにしました」と話す。

そしてインターハイでは予選から常に笑顔を絶やさなかった。だが、さすがに優勝の瞬間は泣き笑いになった。県春季総体で個人優勝しながらインターハイでリザーブに回った塩見茉央(2年)は手が震えたと振り返る。
「木内先輩の発案で優勝したら〝だるまさん〞に目を入れることになっていました。決勝の途中からペンを持って優勝の瞬間を待っていたのですが、手が震えて、ペンが暴れていました」

中井貴久監督は「大会10日前まで木内か塩見かでメンバー選考を悩みました。最後は3年の木内にかけました」と明かす。大会終了後、木内が片目を入れていただるまに、塩見が追加で目を入れた。レギュラーを争った2人によって両目が入っただるまの背中には「インターハイ 全国大会 団体優勝」という祈願の文字。彼女たちの戦いを見守ってきた〝だるまさん〞が、なんとなく微笑んでいるように見えた。

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