2021.10.25

聴覚障がい者サッカー日本代表 新天地“滋賀”から世界へ 髙橋遥佳

世界一になって誇りを

耳に障がいがある聴覚障がい者のサッカーは「音のないサッカー」とも表現される。英語ではデフサッカー。主審が笛とフラッグを併用するなど異なる点はあるが、ルールやピッチサイズは11人制サッカーと同じだ。

甲賀市の三陽建設に所属する髙橋遥佳(旧姓:大谷)は、このデフサッカーの女子日本代表である。

競技に専念するため、2021年から所属先を滋賀に移した。理由は、聴覚障がい者のオリンピックとも呼ばれる〝デフリンピック〞で世界一になるため。

「私たちがメダルを獲ることで日本の聴覚障がい者に誇りを持ってもらいたい。そして、デフサッカーやデフリンピックのことをもっと多くの方々に知ってもらいたい」(髙橋)。

子どもたち向けのサッカー教室や講演を通して競技普及にも力を注ぐ日本代表センターバックは、身振り手振りを交えて熱く語った。

両親からの言葉が支えに

サッカー王国・静岡に生まれた髙橋(当時は大谷)は、当たり前のように5歳からサッカーをはじめた。サッカーはすぐに大好きになったが、周りは男子ばかりで、聴覚障がいがあるのは彼女だけ。

「いじめられましたし、何度もやめたいと思った。でも、父と母から〝やりたいことから逃げたらダメだ〞と言われました。その言葉を支えに頑張ってきました」と言う。

そんな日々を過ごした髙橋が、小学6年の時にデフサッカーと出会う。その時は「自分と同じ障がいを持つ子たちと一緒にサッカーができる。すごくうれしかった」そうだ。

そして小学6年で練習生として日本代表の合宿に参加。当時は大人とのフィジカル差を考慮して小学生の参加は認められていなかったが、父親がケガの責任を持つという形で参加が実現したという。その後は、中学1年で日本代表候補となり、中学3年で2012年の世界ろうあ選手権(W杯)に出場。高校1年で2013年ソフィアデフリンピック出場を果たす。さらに21歳で迎えた2018年アジア大会ではキャプテンとして日本を優勝へと導いている。

そんな彼女の活躍もあって、現在は13歳での代表入りが認められている。女子日本代表において、髙橋は〝パイオニア〞的な存在と言えるだろう。

メダル獲得を狙う22年5月のブラジルデフリンピックをはじめ、23年の世界大会(未定)、そして25年の東京デフリンピック(未定)と、来年からビッグイベントが続く予定。その中でパイオニアの髙橋はどんな未来を切り拓くだろうか。今後の活躍に注目したい。

髙橋遥佳

三陽建設

たかはし・はるか。1997年8月5日生まれ、静岡県出身。静岡県立浜松聴覚特別支援学校(幼稚部から中学部)、静岡県立沼津聴覚特別支援学校高等部(高校)卒。ポジションはセンターバック。日本代表として、2012年世界ろうあ選手権(W杯)、2013年夏季ソフィアデフリンピック、2018年アジア大会(優勝)に出場。好きなサッカーチー ムはバルセロナ(スペイン)、好きなサッカー選手は長友佑都、ロナウジーニョ。得意なプレーは1対1。

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