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2021.02.08

【はばたく】〝数ミリ〞を争う世界に魅了されて。 江川拓馬

【はばたく】2021滋賀アスリートたちの〝現在地〟

約1年延期となった東京2020オリンピック・パラリンピック大会をはじめ、再びスポーツの機運が高まりそうな2021年。
滋賀アスリートたちはどんな想いでこのメモリアルイヤーを迎えるのだろうか。失望、挫折、再起、希望…。さまざまな感情と向き合ってきたアスリートたちの〝現在地〞、そして展望を追う。

競技歴3年で日本2位に

 パラリンピック正式種目であるボッチャは、ジャックボール(目標球/白)に持ち球(青/赤)をどれだけ多く近づけられるかを競うスポーツである。ルールはカーリングに似ているが、決定的に違う点もある。
 2017年に日本ボッチャ選手権で準優勝に輝いた江川拓馬(ライトニング滋賀)はその違いをこう話す。

「ボッチャは、僕みたいな重度の障がいがある選手と健常者が同じルールで戦えますし、どちらにも勝つチャンスがある。そこがこの競技の一番の魅力ですね」

 江川は4歳の時に筋ジストロフィーと診断された。時間の経過とともに筋肉が壊れていく難病で、「小学5年生くらいまでは普通に歩いて生活できていたけれど、それ以降は車椅子での生活になった」という。遊びで車椅子サッカーをやった時期もあったが、四肢(両手両足)の自由が奪われていくに連れ、スポーツからも遠ざかっていった。

 月日は流れ、江川の日常にスポーツが戻ってきたのは大人になってからだった。後輩の勧めでボッチャと出会い、「どうせなら真剣に競技と向き合いたい」と2014年にボッチャチーム「ライトニング滋賀」を立ち上げた。

 そして2年後には滋賀の大会で優勝し、2017年には日本ボッチャ選手権で準優勝。本格的に競技をはじめてわずか3年で、日本トップクラスの選手になった。

 日本代表の強化指定選手に選ばれた江川は「パラリンピックで金メダル」という目標を掲げた。東京パラリンピック2020出場をかけた2019年日本選手権(BC3)では、セミファイナルで優勝した河本圭亮に敗れたものの、勝敗は紙一重。着実に実力を付けていたが、新型コロナウイルスの影響で多くの大会が中止となり、〝東京〞への道はほぼ閉ざされてしまった。

データ蓄積が日本一の近道

 とはいえ、江川のパラリンピック金メダルという目標が消えたわけではない。コロナ禍で練習ができない昨年の4月・5月も「過去の試合動画を見たり、ボールをカスタマイズしたり。少しでも上達をめざした」と話す。

 少し補足すると、江川がボッチャで使用する6つの持ち球は、全て表面の素材や重さが異なっているらしい。それらを戦術や戦略によって変えていくという。

「僕の場合は硬い、普通、柔らかいのを2球ずつ用意します。硬いボールはジャックボールや相手の球を弾く時に使い、柔らかいボールはジャックボールに寄せる時に使うなど戦況によって使い分けます。6つとも微妙に重さを変えてありますが、同じボールでもその日の温度や湿度、フロアの材質によってボールの転がり方や距離が変わってきます。普段の練習から温度や湿度、転がる距離などのデータを収集し、試合当日のデータと合わせて戦術を練ります」

 江川が属すカテゴリーのBC3は最も重い病気を持つ選手たちのクラスで、ランプと呼ばれる滑り台のような補助具を使って試合を行う。そのため、手で投げたり、足で蹴ったりするクラスよりも1球1球のズレが少なく、〝数ミリ〞が勝敗の分かれ目になる。極めて繊細ゆえ、日頃のデータ収集が大切になる。言い換えれば、まぐれで勝てるほど甘い世界ではないということだ。

「極端な話、ランプ(滑り台)の角度だけではなく、ボールを押す力加減や押す場所によっても転がる距離や軌道は変わってきます。特に僕のいるBC3はみんなの精度が高いので、数ミリ外れると戦術を練り直さないといけない。試合中は常に頭の中で計算をしている感じなので脳がかなり疲れます。まぁそこも面白いところですけれど…」

 今年の目標は10月の「日本選手権で初優勝すること」だという。そのために週3日、1回3〜4時間の練習の中で江川は黙々とボールを転がし、データを蓄積している。この地道な作業が、日本一への近道だと信じている。

江川拓馬

ライトニング滋賀

えがわ・たくま。1990年8月12日生まれ、東近江市出身。4歳の頃に筋ジストロフィー診断。2014年にボッチャチーム「ライトニング滋賀」を設立し、2016年には滋賀ボッチャチャンピオンシップで優勝。2017年には日本ボッチャ選手権に準優勝し、日本代表の強化指定選手に選ばれた。2018年のBIS Fed2018ドバイ ボッチャワールドオープンペア部門で準優勝に輝く。

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