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2020.07.17

名将アランHC がもたらした「シャッフル・オフェンス」 

一滴のしずくはやがて川になり、大きなうみを形成する。滋賀レイクスターズもそうやって、故郷やバスケットを愛する者たちによって形を成してきた。この連載では、そんなバスケットマン(B-MEN)のサイドストーリー(B面)を軸に、レイクスの軌跡をひもといていく。

(構成・文:白井邦彦)

 

 

【B-MEN/B面】
第六回:アラン・ウェストオーバーHC
2011-2012/2012-2013 SEASON

シャッフル・オフェンス

レイクスの歴史を紐解くと大きな分岐点がいくつかある。中でも、2011-2012/2012-2013の2シーズンは一つの大きなターニングポイントと言えるだろう。変化をもたらしたのは、アラン・ウェストオーバー(アランHC)という名将だ。
オーストラリアのトップリーグ「ナショナルバスケットボールリーグ(NBL)」の名門メルボルン・タイガースを2度の優勝へ導き、2006年にはそのシーズンの最も優れたヘッドコーチに贈られる「NBLコーチ・オブ・ザ・イヤー」も受賞。レイクス以前の通算成績はレギュラーシーズン・プレイオフを合わせて134勝74敗、通算勝率.644という実績を残している。

 

レイクスにおける彼の代名詞は「シャッフル・オフェンス」だった。選手全員がポジションを入れ替え(シャッフルし)ながら常にボールを動かし、ノーマークの選手を作ってリングにアタックする攻撃。こう書くと簡単そうだが、ベーシック・パターンをベースに細かいアレンジを加えると恐ろしいセット数になる。当時、アランHCは「数えたことがないから正確にはわからない。でも、オプションは50以上、いや100はあるんじゃないかなぁ」とニヤリと笑っていたのを思い出す。経験豊かなベテラン選手はともかく、伊戸重樹や本多純平、宮城信吾といった若い選手にとってはオプションを頭に叩き込むだけでも大変な作業となった。

 

だが、意外にも早くシャッフル・オフェンスは機能した。レイ・ニクソンやディオニシオ・ゴメスら外国籍選手との相性もよく、2011-2012シーズンの開幕戦は敗れたものの、翌節にはアランHC体制での初勝利を挙げると、そこから5連勝。このシーズンからキャプテンを小川伸也に譲っていた藤原隆充は「いや〜、このチームでキャプテンやりたかったっす(笑)」と、こぼす場面も。それくらい、シーズン序盤から魅力に溢れたチームだった。

“人たらし”の指揮官

武将・豊臣秀吉の人物像について「人たらし」という表現を用いられることがある。会った人すべてを自分の虜にしてしまうほどの魅力があるといったニュアンスだが、アランHCもまさにそんな人物だった。キャプテン小川は2020年6月に行ったインタビューでアランHCをこう評している(小川伸也自身の記事は次回)。

 

「シャッフル・オフェンスがどうこうより、アランさんの魅力は人望の厚さだと思います。練習や試合ではめちゃくちゃ怒られましたけど、コートを離れたらすごく優しい。あのギャップにみんなやられてしまう(笑)。アランさんのために勝ちたいってみんなが本気で思っていましたし、シーズンが始まる前からチームが一つになっていたのを覚えています」

 

過去の取材ノートをペラペラめくると、アランHCの「人たらし」ぶりがわかる名言もいくつか出てきた。例えば、来日翌日に練習体育館を訪ねた彼は、自主練習をしていた藤原や小川ら日本人選手たちを集めて、こう話した。
「一緒に、記憶に残るようなシーズンにしよう!」
2011-2012シーズン開幕前のインタビューでは、選手起用についてアランHCはこう答えている。
「私は一人で30点、40点を取る選手より、たとえ1分しか出られなくてもチームのためにハードワークし、試合の流れを変えられる選手を使うだろう。私が好きなのは、そういう選手だ」

 

アランHCを中心に結束を固めたレイクスは、当時のシーズン最多記録となる33勝をマーク(歴代最多は2015-2016シーズンの35勝)。2012月2月には後に三代目キャプテンに就任する横江豊がアーリーエントリーで加入し、熟成期を迎えたシーズン後半には過去最多連勝記録の9連勝を打ち立てた(2012年3月24日の高松ファイブアローズ戦から4月21日の新潟アスビレックスBB 戦)。外国籍選手の能力がチームに大きな影響を与えていた当時のbjリーグにあって、選手全員が活躍するアランHC のバスケットは魅力的で、観る者を熱狂させていた。
「個ではなく、チームで戦う」。今のレイクスにも通ずるような、ある種の文化を根付かせたのは、オーストラリアからやってきた“人たらし”だった。(文中敬称略)

 

 

<2011-2012 SEASON>
ウェスタンカンファレンス4位(33勝19敗)
HC:アラン・ウェストオーバー
♯0:レイ・ニクソン
♯1:岡田優
♯4:ジュリアン・アシュビー
♯5:小川伸也(キャプテン)
♯10:波多野和也
♯11:藤原隆充
♯13:伊戸重樹
♯15:宮城信吾
♯18:本多純平
♯19:ディオニシオ・ゴメス
♯23:横江豊
♯30:ジョシュ・ペッパーズ
♯33:ブライアン・マークソン

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