2019.08.16

[アンプティサッカー]関西セッチエストレーラス 上野浩太郎

利き腕を失ってもポジティブに。アンプティサッカーで世界を目指す。

「3ヶ月間くらい、夢にあのシーンが出てきて寝るのが怖かった」

 アンプティサッカーのGK上野浩太郎が話すのは、昨年4月に工場機械に右腕を巻き込まれ、肘から下を失った事故についてだ。 時間とともに記憶は薄れたそうだが、今度は 「利き腕が使えなくなった。 もうGKはできない」 と寂しさがこみ上げてきたと言う。

 そんな上野に光明が差し込んだのは、病院でのリハビリ中。 切断障害のある人たちが行うアンプティサッカーの存在を知ったのだ。 フィールドプレーヤーは下肢に、GKは上肢に障害のある人がプレーする。
「もう一度、自分にもGKができるチャンスがある。うれしくて仕方がなかった」。

 上野は、サッカーを始めた小学3年からGKとフィールドプレーヤーを掛け持ちしていた。 中学2年からGKに専念し、強豪・綾羽高校ではケガに悩まされながらもAチームに上がった。 3年時の近畿大会では負傷退場した後輩GKの代わりにゴールマウスを守ったこともある。 GKは上野の輝ける場所だ。

 母・和代さんは事故当時を振り返り、「この子の人生、これからどうなるのかなと思いましたが、幸いポジティブでよかった」 と話す。 そして 「これからも自分を見失わずに生きていってくれたらそれでいいと思っています」 と続ける。

 上野はアンプティサッカーの日本代表が多く所属する 「関西セッチエストレーラス」 に所属し、今年5月にはクラブ日本一を決める 「コパ・アンプティ」 で準優勝にも貢献。「決勝では最後の最後に決められたんすよ〜」 と悔しがる彼は、なんとも楽しそうだ。 今後の目標は 「日本代表に入ってワールドカップに出ること」。 自分らしく生きる道はすでに見つかっている。

上野 浩太郎

関西セッチエストレーラス

Profile/うえの・こうたろう。2000年1月14日生まれ、甲良町出身。甲良東小学校、甲良中学校、綾羽高校。彦根のプライマリーサッカークラブで小学3年からサッカーを始めた頃からGKを兼任。中学時代はエスピロッサ(彦根)でプレーし、綾羽高校3年時にはインターハイ滋賀県予選で準優勝(ベンチ入り)。2018年4月に事故で右腕を切断し、現在は関西セッチエストレーラスでGKを務める。

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