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2019.08.09

足元から選手を支える。”皇子山”の芝生物語。

指導者として、ボランティアとして、親として…。
スポーツは選手だけではなく、支える人たちの助けがあって初めて成立するもの。
連載﹇SOS﹈では、そんな縁の下の力持ちにスポットを当てていきます。

ビッグゲームに使用される喜び

国内最高峰が認めた耐久性

 2002年4月27日と5月6日。 Jリーグのセレッソ大阪が皇子山総合運動公園陸上競技場で公式戦を行った。FIFAワールドカップ日韓大会に向け大阪・長居スタジアムが改修工事に入り、その代替えとして白羽の矢が立った。

 当時をよく知る上原健氏(公益財団法人 大津市公園緑地協会 皇子山総合運動公園 陸上競技場場長)は 「国内トップリーグから私たちが育てた芝生が認められ、すごくうれしかった」 と振り返る。

オーバーシードで青々と

”皇子山”は、滋賀のフットボーラーやラガーマンにとって聖地である。 高校サッカーや高校ラグビーの滋賀県大会決勝が行われてきた歴史もあり、憧れのピッチという印象が今も色濃く残っている。

 その聖地の大きな転換期となったのが、平成16年(2004)のオーバーシード導入だ。

 オーバーシードとは、1年中、青々とした芝生を保つための方法。 夏芝が枯れかける頃に、寒さに強い冬芝を育てる養生サイクルだ。 この技法が日本に紹介される前は、冬のサッカーやラグビーは茶色い夏芝のピッチで行われていた。

 滋賀県内の競技場で、オーバーシードを導入したのは、”皇子山”が最初だと上原氏は話す。
「当時、私もオーバーシード導入に関わりました。 今は9月中に冬芝の種をまき、5日で発芽、2週間で根を張るといったサイクルで行っていますが、導入当初は失敗もありました。 いろんな方々にアドバイスをいただきながら進めてきました。 オーバーシードの導入は、見た目の美しさが注目されがちですが、実は冬芝を入れることでピッチの耐久性が上がります。 茶色い夏芝のピッチは根の痛みも激しいですが、そこに冬芝が入ることで痛みも軽減されるんです」

 年間を通していいピッチを提供できる環境作り。 オーバーシードの導入が、それを加速させた。

”刈り高”でプレーが変わる

 選手目線で言えば、芝生の刈り高も気になるところ。 特にポジショナルプレー(ボールを保持したスタイル)がサッカーの主流になっている現在、ボールの転がり具合は大きなカギとなる。当然、上原氏の元にも、芝生の長さに対する細かい注文が入ってくる。
「ショートパスを主体にしたサッカーチームは短い芝を好みます。でも、ラグビーではスパイクが滑らないように長めの芝が求められます。”皇子山”では、サッカーの試合の翌日にラグビーの試合が組まれるケースも多々あります。芝の長さにどう折り合いをつけるかは頭を悩ます部分です」

 サッカーでは約20ミリ前後の短いピッチが求められる。 ラグビーは30〜40ミリ。連日にわたって試合が行われる場合は、間をとって27ミリ前後に刈り込む。 1日でどれくらい芝が成長するかも計算にいれながら。 パッと見は変わらないが、そういう微調整が選手のプレーの質、大きく言えばその後の人生を左右するため、芝生管理には大きな責任があると言える。

”皇子山”の独自スタイル

 皇子山の芝生では、陸上競技の試合でハンマー投げも行われる。 高く宙を舞った競技ハンマーが地面に叩きつけられると、芝が凹む。 回復させるためには時間がかかるが、翌日にサッカー、翌々日にラグビーといった具合に、使用日程が過密な場合も出てくる。

 そういう場面で活躍するのが、ゴルフカップを掘るホールカッターという道具だ。 上原氏によると、他の競技場ではなかなか見ない皇子山独特の風景があるという。
「フィールド外の芝も日頃から養生しています。 それをホールカッターで地下20〜30センチほどくり抜き、ハンマー投げで傷んだ芝もくり抜いて、入れ替えます。 そうすることで早くピッチが補修できます。 これを投擲選手の高校生が自らやります。 この風景はなかなか珍しいと思います」

 芝生は生き物。 手をかけないと痛む。 だが、手入れされた芝生は見た目に気持ちよく、プレーの質も高めてくれる。”皇子山”のピッチには、選手を足元から支える人たちのストーリーが息づいていた。

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