2017.07.01

【Face of Campus SPECIAL】湖国からの挑戦状⑤

彦根から世界へ。2人のアスリートが大舞台に挑む。

奇しくも2人は同級生

この夏、2人の彦根出身アスリートが世界へと飛び立つ予定だ。 一人は競泳の大橋悠依、もう一人は陸上の桐生祥秀だ。

大橋は今年4月に名古屋で行われた日本選手権の女子400m個人メドレーで日本新記録を樹立。 7月23日に開幕する 「世界水泳」 (ハンガリー)に挑む日本代表に内定し、初の世界水泳に臨む予定だ。日本選手権で叩き出したタイムは従来の記録を3秒24も上回る4分31秒42。 昨年のリオ五輪の銅メダルよりも速いタイムだった。

桐生は6月24日に大阪で行われた日本選手権の男子100mで4位に。原稿作成時点(6月25日)では、8月4日開幕の 「世界陸上」 (ロンドン)出場は未定ながら、4×100mリレーで代表入りする可能性はある。

奇しくも2人は同じ彦根出身で、学年も同じ。 しかも高校卒業後には同じ東洋大学へ進学という道を歩んでいるからおもしろい。

初の世界水泳。指導者もエール

桐生については、多くの報道がなされているので今回は詳しくは触れない。 ここからは初の世界水泳に挑む大橋について話を進める。

大橋は、6歳から高校3年まで彦根イトマンで練習を重ねた。 小学3年から高校3年まで彼女に水泳を教えた奥谷直史さん(草津イトマン)は 「入ってきた時はそれほど目立った存在ではなかった。 でも、だんだん頭角を表してきて、他の子とは明らかに違う大きな泳ぎをしていた」 と振り返る。

その大きな泳ぎを可能にしているのが、優れた水をつかむ感覚。 その能力が、平泳ぎの金メダリスト北島康介を育てた東洋大学の平井伯昌コーチの目に止まった。

だが、東洋大学へ進んだ大橋はなかなか結果が残せず、苦しい時間を過ごすことになる。 当然、奥谷さんも大橋が苦しんでいた時期は知っている。
「大学で苦しんでいるのは知っていました。 でも、力があるのはわかっていますし、国体の関係で滋賀に帰ってきた時も”のんびりやっていけばいい”と伝えていました」

苦しんでいる姿を見ていたから、大橋が日本新記録を出した時は「もう本当にうれしかった」 と語る奥谷さん。だが、あえて気持ちを引き締めるような言葉をかけた。
「ただ、今回の日本新に関してはレース前から”出るかな”とは思っていました。 3秒以上も記録を更新したのは想定外でしたけれど(笑)。 日本新を出した翌日に電話で話した時、本人もすごく喜んでいるのはわかりました。でも、すぐに世界水泳もある。そして彼女の最終目標はここではない。だから、あえて気持ちを引き締めるようにと伝えました」

最終目標とはオリンピックである。つまり今回の世界水泳はまだ通過点。だが、初の世界水泳に挑む大橋にとっては、貴重な経験を積める舞台である。 奥谷さんは最後にこう続けた。
「あまり国際レースの経験も多くはないので、大舞台に慣れるという意味ではいい経験になると思います。 自分の力をどこまで出せるか、ぜひ試してきてほしいと思っています」

FILE.06[SWIM]東洋大学競泳 個人メドレー
大橋悠依

PROFILE/おおはし・ゆい。1995年10月18日生まれ、彦根市出身。個人メドレー。6歳から彦根イトマンで水泳をはじめ、草津東高校時代には初の国際大会にも出場。2016年4月の日本選手権では400m個人メドレー3位でリオデジャネイロ五輪出場を逃したが、翌年の同大会で日本新を樹立。今年7月の世界水泳の日本代表に内定。

FILE.07[TRACK]東洋大学陸上 短距離
桐生祥秀

PROFILE/きりゅう・よしひで。1995年12月15日生まれ、彦根市出身。男子100m、200m、4×100mリレー。彦根市立南中学から陸上競技をはじめ、洛南高校(京都)3年の時に日本歴代2位の10秒01をマークして一躍脚光を浴びる。昨年はリオデジャネイロ五輪の4×100mリレーで日本チームの三走として走り、銀メダル獲得に貢献。

関連記事