2016.10.29

吉川貴史・山水翼瑳・山田翔太 / 天理大学 / ホッケー部

伊吹発、天理経由、東京行き。4年後が楽しみな3人の現在地。

世界を知った4月の初陣

2016年4月。滋賀出身の山堀貴彦監督(聖泉大学)が率いる ホッケー日本代表が、第25回アズランシャーカップ(マレーシア)で初陣を飾った。そのメンバーの中に、天理大学ホッケー部のMF山水翼瑳(主将)、FB山田翔太、GK 吉川貴史もいた。3人は伊吹高校で高校3冠の偉業を達成したメンバー。大学で揉まれ、2020年の東京オリンピックでメダル獲得を目指す若き日本代表に選出されるまでに成長していた。だが、山堀ジャパンの初陣は、世界ラ ンク1位のオーストラリアや同7位のインドら格上国を相手に6戦全敗。山水は「1勝もできず悔しかった」と言う。 「でも、個人的には王者オーストラリアと戦えたことは収穫でした。実は、オーストラリアは中学3年の時に観戦して衝撃を受けたチーム。こうして自分が対戦していると思うと不思議でもあり、うれしくもあった。同時に日の丸を背負う責任を強く感じました。」山水にとって本当の意味で日本代表がスタートした瞬間だった。

大学王座ファイナルで負傷

オーストラリアに1ー3で敗れた日本だったが、後半は自分たちの時間帯も作れた。前半の猛攻をしのいだことが大きく、GK吉川がこの試合のMVPに選ばれた。その吉川は大会を通して、山堀ジャパンの可能性を感じたという「日本のストロングポイントが通用しない時にどう戦うかなど課題も多かった大会。個人的にも守備のコーチングなど磨かないといけない部分も浮き彫りになった。でも、初陣としてはまずまず。 選手時代に得意とした技と同じ。
これからもっと良くなるという手 応えもつかめた大会でした」帰国後、天理大学に戻った吉川は、自らの課題と向き合いながら7月3日の「第35回全日本大学ホッケー王座決定戦」の決勝戦のゴールマウスを守った。だが、残り13分で2点ビハインドの状況で負傷退場。絵に描いたような劣勢だったが、それを逆手にとってGKなしのパワープ レーを仕掛けて終了間際に同点に。SO戦に持ち込み劇的な逆転勝利で連覇を達成した。「伊吹の時もパワープレーで大逆転した試合があった。それを思い出した。チームに迷惑をかけた分は11月のインカレで返します」守護神・吉川は再起を誓った。

引き継がれる ドラッグフリック

11月のインカレの前に、山水と山田は日本代表として 10月20日〜30日の「アジアチャンピオンズ トロフィー」(マレーシア)に出場する予定だ。インドやパキスタンなど世界ランクで日本よりも上位の国を相手に、どこまで善戦できるか。4月のアズランシャーカップで日本代表最多の3ゴールを挙げた山田の活躍に注目が集まる。山田の最大の武器は〝ドラッグ フリック〞だ。ペナルティコーナー(PC)と呼ばれるゴール前のセットプレー時に行うシュートの一つだが、奇しくもこれは山堀監督が「山堀監督とは少し種類が違うドラッグフリックなので比較は難し い」(山田)とはいえ、〝日の丸フリッカー〞が湖国出身の山田に引き継がれているから面白い。「精度もパワーもまだ足りないけれど、今の日本代表では自分にPCを任されている。そういう意識を持ってプレーしています。」 山田にもすでに日本代表としての自覚が身についているようだ。山堀監督は以前からPCを一つのキープレーに挙げている。対戦相手が強国になればなるほど守備を崩すのは難しく、セットプレーが勝敗のカギを握るからだ。言い換えれば、山田のドラッグフリックが磨かれれば磨かれるほど日本代表は強くなると言えるかもしれない。もちろん、4年後の東京オリンピックに向け、たった 16人の日本代表をめぐるサバイバルはまだ始まったばかり。3人が東京のピッチに立てる確約はないが、小学生からずっと一緒にホッケーをしてきた三羽烏が一緒に晴れ舞台に立つ可能性もある。「みんなで出て、メダルを取りたい」。キーマンの山田は、ぎゅっとスティックを握りしめた。

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