2025.05.01
全国にエンタメ・アリーナ増加中
多目的なエンタメの「箱」
プロバスケ「Bリーグ」が進める「B・革新」では地域を活性化させる「アリーナ」が重要視されている。そのキーワードの一つが「エンターテインメント(エンタメ)」だ。それを創出するアリーナの整備は「B・革新」のキモと言っていい。リーグ側がアリーナに求める役割は「最高品質のエンターテイメント/競技環境の提供」「有事の際の避難場所等、地域のライフライン化」「地域活性化の起爆剤」。そして「バスケにとってよいだけではなく、地方創生の核に」。つまり、バスケ専用ではなく、多目的に地域を盛り上げるための「箱」が必要ということだ。
大型アリーナの建設ラッシュ
「B・革新」が一つのトリガー(引き金)となって、全国的に大型アリーナの建設が相次いでいる。2022年に開館したキャパ8000人の「沖縄サントリーアリーナ」をはじめ、2023年にはキャパ6000人の「OPEN HOUSE ARENA OTA(群馬)」、キャパ8000人の「SAGA アリーナ」が誕生した。2024年にはキャパ7〜8000人の「横浜BUNTAI」、キャパ1万人の「LaLa arena TOKYO-BAY」、キャパ6000人の「HAPPINESS ARENA(長崎)」と続いている。
さらに25年4月にはキャパ1万人の「GLION ARENA KOBE」がオープンし、7月にはキャパ1万5000人の「IGアリーナ(名古屋)」のオープンも予定されている。その後も続々と建築ラッシュが続き、全国でざっと20以上の大型アリーナが誕生予定だ。
これまでは持ち回りの国体によって地方の施設整備が行われてきた中で、全国規模で一気にこれだけのアリーナが誕生するのは歴史的に初だろう。バレーボールのプロリーグも始まり、国内のアリーナスポーツは最盛期に入ったと見ていいかもしれない。
カギは「スマートベニュー」
先述の通り、アリーナには「バスケにとってよいだけではなく、地方創生の核に」なるような機能が求められている。1つのキーワードとなり得るのが「スマートベニュー」だ。周辺のエリアマネジメントを含め、複合的な機能を組み合わせたサステナブルな交流施設のことを意味し、沖縄アリーナやSAGAアリーナなど新設された施設のほとんどがスポーツだけではなく、音楽ライブや各種イベントが行える多目的な設計になっている。いわゆる「エンタメ・アリーナ」である。これから誕生する施設もほとんどが多目的設計になっており、今後はこれがアリーナのスタンダードになると思われる。
また、行政主導ではなく民設民営のアリーナも増えており、通販大手「ジャパネット」のグループ企業(リージョナルクリエーション長崎)が運営する長崎スタジアムシティは好例だろう。サッカースタジアム、アリーナ、ホテル、商業施設などが同エリアに集まり、スマートベニューとしての機能を果たしている。アリーナではヴェルカ長崎のホームゲームだけではなく、音楽イベントも積極的に開催し、稼働率を上げている。2024年10月オープンのため、長期的な効果や成果を見ることはできないが、「地域活性化の起爆剤」になっているのは間違いないだろう。
では、滋賀はどうか。エンタメ・アリーナやスマートベニューという観点で言えば、それらを満たしている「箱」は残念ながら見当たらないだろう。
県内には2〜4000人の集客を実現するイベントも増えてきた。いわゆる 〝ソフト〞は成熟してきただけに、改めて〝ハード(アリーナ)〞の意義を見つめる時期に来ているのかもしれない。