2024.07.01
今年を笑顔で終わるために。
INTERVIEW
女子400mHで日本選手権3連覇中の山本亜美(立命館大学4年)だが、昨年の世界陸上で〝大きな壁〞を感じたという。
「自己ベストを出しても準決勝や決勝に進めるかどうかも分からない世界。やっぱり日本陸上とは違った」。だが、その経験が今夏のパリオリンピックへの思いを強くさせたのも事実だ。陸上競技部のキャプテンになった大学ラストイヤー。勝負の夏にかける想いを聞いた。
〈Q〉オフシーズンに肉体改造に取り組んだ。
「お尻やハムストリングを強くしたいと思い、ウェイトトレーニングを多くやってきました。重さも挙げられるようになって、試合の映像を自分で見ても下半身が大きくなっているなと感じましたし、周りからも言われます。あまり意識はしていなかったのですが、肩など上半身もゴリゴリになりました(笑)」
〈Q〉肉体改造のきっかけは昨年の世界陸上が影響している?
「やっぱりもう少し大きくしないと走れないなと感じました。周りの選手が〝えっ男?〞みたいな筋肉質だったので…。まだまだ自分は細いなと感じました」
〈Q〉筋肉量を増やすとどんな影響が?
「単純にパワーが出ます。でも、私の走りの特徴は弾んだり、伸びやかな動きだったりなので、筋肉隆々で走るのは私らしくない。パワーをつけた上で自分の動きにしていければと考えています。でも、シーズンイン(京都インカレや静岡国際)はまだ体が重いと感じました。このパワーをスピードに変えていきたいです」
〈Q〉日本グランプリシリーズグレード1の静岡国際陸上は日本人トップの3位でしたが、中国の選手が54秒台の大会記録で圧勝していました(山本の自己ベストは56秒06)。何か刺激を受けた?
「えっ、と思うくらいめちゃくちゃ速かったですね(笑)。でも、あれが世界の標準タイム。オリンピックに出る最低条件というか…。京都橘高校(母校)の先生からも〝あの選手と一緒に走れて感じるところがあったんじゃないか〞って問われたんですけど、正直速すぎて…。あっ抜かれたと思ったらもう見えないところを走られていました(笑)。でも、大会が終わってから冷静に考えると、同じアジアの選手やん!希望やん!と(笑)。日本人でも出せない記録ではないなと思っています」
〈Q〉いよいよ4連覇がかかる日本選手権です。プレッシャーはありますか?
「昨年ほどは無いです。昨年は1位にならないと日本代表に選ばれないというのがあったので、タイムと戦っているというよりは優勝しないといけないことがプレッシャーになっていました。めっちゃ嫌やって思って直前まで泣いていたくらいですから(笑)。でも、今年はパリオリンピックに出るために日本選手権で55秒台を出すということにフォーカスできています。4連覇がチラつくというよりは、大学最後のシーズンなのでまず学生記録(55秒94)を更新しようと。そうすれば自ずと4連覇になる。周りと戦うのではなく自分との戦いです」
〈Q〉パリオリンピックへの手応えは?
「(世界ランキングが)今46番くらい。40番までパリに行ける。日本選手権で優勝ポイントをもらって、そして55秒台で走れたら行けるんじゃないかという計算です。本当は静岡国際で優勝して、木南(日本グランプリシリーズグレード1の木南道孝記念陸上競技大会)を棄権せずにポイントを獲得できれば日本選手権はもっと楽な気持ちで走れたと思います。でも、木南は少し足に違和感があり、関西インカレのことを考えて棄権しました。やっぱり大学生なので学生の大会も大切に思っていますから。もちろん、すごく迷いましたけど、自分に甘えを作るんじゃなくて、日本選手権で55秒台を出したらいいだけやん!と言い聞かせて木南を棄権しました。それでダメならパリも無理やし、別にそれでいいやと」
〈Q〉関西インカレを選んだのはキャプテンだからというのもある?
「やっぱりキャプテンやから出ないわけにはいかないですよねぇ(笑)。それは冗談ですけど、ほとんど休みがなかった昨年は全日本インカレに出るのを諦めちゃったんです。悔しいというか、情けなくて、めっちゃ泣いて…。今年は笑顔で締めくくりたいので、全部の大会を笑顔で終われるようにしたいと思っています」
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山本 亜美
立命館大学
やまもと・あみ。草津市立山田小学校、松原中学校、京都橘高校を経て立命館大学へ。現在4年生。高校から400mH(ハードル)を始め、2年時には茨城国体・少年女子共通400mハードルで優勝(京都高校記録)。3年時には日本選手権で4位入賞。2021年の日本選手権で初優勝し、22、23年と合わせてV3を達成。23年アジア陸上選手権で銅メダルを獲得。23年世界陸上に出場。