2023.09.01

大学院へ進んで追い求めたもの… 日本インカレの王者 林拓優

ラストチャンスにかける

 23年7月15日。平和堂HATOスタジアム(彦根)で行われた「第82回 滋賀県陸上選手権大会」
男子100m決勝は、日本体育大学の林 拓優が制した。

タイムは10・40秒。

同日に行われた予選で10・33秒の好タイムを出していた林は「タイム的にはもう一つですけど、暑い中でしっかりとレースに勝てたことは良かったと思います」と振り返った。

この日は30℃を軽く越す猛暑日。

林は「暑いのは苦手です。その中で予選と決勝の両方でまずまずのタイムを出せたことは収穫だと思います。また今シーズンに取り組んでいることへの手応えも感じられました」と汗を拭った。

 林は昨年9月の日本インカレ男子100m準決勝で自己ベストの10・25秒をマークした。
だが、決勝では0・01秒差で惜しくも2位に終わった。とはいえ、この時点でフォームはほぼ完成されていたと思われたが、林はその走りをさらに追求するのではなく、一度〝走り〞をリセットしたという。

「今までもシーズン中に走りを見直すことはやってきました。今年はスタートの部分も、トップスピードも、ウェイトもほぼ全て見直してきました。それが最近はようやく馴染んできた印象があります。走りを一から見直すことに怖さはありました。その中で、今回の滋賀県選手権では予選と決勝で安定した走りを出せた。自分にとっては大きな手応えになります」

 「怖さ」があるのは当然だろう。一度作り上げたものを壊し、再構築するという行為はある意味で博打だからだ。必ずうまく行くという確証がない中で、林が再構築に踏みきった理由は1つだ。

「日本インカレで優勝するためです。昨年2位だから今年は1位になれるような甘い世界ではないことも充分に理解しています。でも、優勝するために大学院にまで進学したので、できることは全てやって挑みたい」

大学院2年の林にとって、日本インカレ制覇へのチャンレジは今年(9月14日開幕)が最後となる。
大学生活の全てを〝その一瞬〞に注ぎ込む。

林 拓優

日本体育大学

大津市立大石小学校、南郷中学校、龍谷大学平安高校を経て日本体育大学へ。現在大学院2年。中学時代は野球 と陸上競技を掛け持ちし、JOCジュニアオリンピックに出場するなど潜在能力の高さを見せた。高校から陸上競技一本に。2022年6月の日本選手権男子100m予選では当時の自己ベスト10.30秒をマークし、多田修平(住友電工)をかわして1位通過している。昨年の日本インカレ準決勝で自己ベストを10.25秒に更新した。

関連記事