2022.11.14

活動開始から5年で地域の誇りに。 注目される女子野球のパイオニア。東近江バイオレッツ

女子硬式野球のパイオニア

「もちろん、まだ満足はしていません」と前置きした上で、東近江バイオレッツの上田玲総監督はニッコリと笑ってこう続けた。
「全国初の地域密着型クラブとして活動を初めて5年目ですが、私が想像していた以上に良い環境が整っています。女子硬式野球チームの一つのモデルケースを作れているのではないでしょうか」

発足にあたって、上田総監督が求めた条件は主に3つ。毎日野球ができる場所があること、選手たちの雇用先があること、そして選手たちの住まいがあること。
この条件を満たす地域として東近江市が候補に挙がった。地元出身の4番打者・中嶋優菜の父親らを中心に続々と協力者が集まり、2018年4月にチーム活動が始まった。

当初5名だった選手も年々増加し、現在は24名が所属。空き家を改装したシェアハウスなどで暮らし、午前中に練習し午後から地元企業などで働くなど理想的な環境が築かれている。母体企業に左右されがちな実業団チームではなく、次代の女子硬式野球チームとして今や全国から視察者が訪れる。いわゆる〝パイオニア〞である。


日本一で東近江を元気に!


そんな東近江バイオレッツが今季(2022年度)は関西女王に輝いた。
だが、8月の全日本クラブ選手権では2回戦敗退に終わった。
近江八幡市出身のキャプテン木瀬悠里は
「悔しい。関西大会で私たちが倒した阪神タイガースWomenが日本一になったので余計に悔しい」と話す。

立ち上げメンバーで主砲の中嶋優菜は
「5人の頃から活動してきて、日本一になれるチャンスを逃した。
4番打者として勝利に導けなかったことが悔しい。10月の全日本選手権では絶対に優勝したい」
と言葉に気持ちを込めた。

10月に愛媛で開催される全日本選手権は、高校・大学・社会人の強豪が集い、真の日本一を決める大会。
この大舞台に東近江バイオレッツは協会推薦枠で出場する。
日本代表の横山彩実は「今年最後のビッグタイトルですし、いつも支えてくださっている皆さんに良い報告ができるようにみんなで戦いたい」と意気込む。

また、選手と主務を兼任する坂原朱音は
「普段の仕事だけではなく、ピンクリボン運動の啓発や飲食店のデリバリーをお手伝いするなど地域の皆さんと一緒に私たちは成長してきました。
恩返しではないですが、優勝を持ち帰って一緒に喜びたいです」と上を見る。

全日本選手権は10月9日から始まり、初日に2試合という山場を迎える。
だが、今季から指揮官に就任した元女子プロ野球選手の中村茜監督は目の前の一戦が大事だと話す。
「力を出し惜しみせず、一戦一戦を全力で挑むことでチームが一つになる。その先にしか優勝はない」。
勝負の秋。
市の花「ムラサキ」をチーム名に冠した東近江バイオレッツは、地域一丸で季節外れの大輪を咲かせるつもりだ。

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