2022.01.07

応援されている それを実感した日【ライフル射撃】中口 遥 滋賀ダイハツ販売

選考会3日前に五輪延期

今年の11月下旬。日本代表合宿から戻ったライフル射撃の中口遥に、所属先の滋賀ダイハツ本社で話を聞くことができた。仕事の制服姿で現れた中口にアスリートの威圧感はなく、周りの女子社員からは「相変わらず、カワイイなぁ」と声がかかる。失礼を承知で言うと〝普通の〞女の子である。

だが、撮影時に代表ジャージに着替えてもらうと急にオーラが湧き立った。やはり中口はオリンピック選手なのである。

2021年3月の東京2020オリンピック最終選考会(女子10mエアライフル個人)で1位となり、中口は初のオリンピック出場権をつかんだ。選考会最終日の射撃を終えた直後に関係者からポンと肩を叩かれ、代表内々定が告げられた。感想は「長かったぁ」だった。

これには2つの意味がある。一つは4日間にわたった選考会に対しての感想。もう一つは選考会自体の1年延期に向けたものだ。

「本当なら1年前に選考会が行われる予定でした。私自身もそこにピークを持ってきていたのですが、選考会の3日前にオリンピックの1年延期が決まった。選考会も急遽中止に。最初は〝ん〜〞と思いました。でも、周りの選手たちが〝追加で1年間、腕を磨けるね〞とかポジティブな発言をしていたので、私もすぐに気持ちを切り替えることができました。ただ、やっぱり1年延期は長かったです」

全社員から応援メッセージ

晴れて、初のオリンピック切符を手にした中口だったが、〝1年後〞もコロナ禍は収束せず大会中止を訴える声も挙がった。本当に開催されるのか、本当に出場していいのか。不安な日々が続いた中で、中口を勇気づけたのは滋賀ダイハツの社員たちだった。

「オリンピック前に、滋賀ダイハツ全社員とリモートでつないで壮行会を開いていただきました。画面に映る何百人の社員を見て、こんなに多くの方々が私を応援してくれていると理解できました。すごく心強かったですし、不安な気持ちが消えたのを覚えています」

東京2020オリンピックで中口は女子10mエアライフル32位、混合エアライフル13位だった。

「結果はあんまりですけど、今回は出場できたことが大きかったと感じています。オリンピックの雰囲気もわかりましたし、社員をはじめ多くの方に応援していただいていると実感できたから。3年後のパリはメダルを狙います」

2022年には日本の出場枠を取る戦い(世界選手権)が控えている。代表選考会とは違った重圧がかかるだろうが、中口に不安はない。「みなさんに恩返しできるように頑張るだけです」。満面のスマイルは〝普通の〞女の子の、それだった。

中口遥

滋賀ダイハツ販売

なかぐち・はるか。1998年1月13日生まれ、鳥取県出身。米子北斗中学、日野高校(鳥取)、同志社大学を経て、 2020年に滋賀ダイハツ入社。高校時代は選抜大会3位を2度経験。大学時代は全日本選手権優勝など。東京2020オリ ンピックでは女子10mエアライフル個人、男女混合10mエアライフル団体に出場。151㎝。

関連記事