2021.03.13

涙の全日本ジュニア初制覇「やっと両親に恩返しできた」 本田ルーカス剛史

レイクスサポートアスリートの本田ルーカス剛史(綾羽高校3年)がこの冬、躍動した。

2020年11月の全日本ジュニアで悲願の初優勝を果たすと、続くGPシリーズ最終戦のNHK杯国際フィギュアスケート競技大会では初出場で表彰台(3位)へ。

果たして、大ブレイクの理由は何だったのか。

トリプルアクセルを習得

五輪メダリスト育成をミッションに掲げる「木下アカデミー」が、2020年4月に発足した。紀平梨花(関大KFSC)らトップ選手を指導する濱田美栄コーチがGMを務め、ヘッドコーチには1998年長野五輪日本代表の田村岳斗が就任。ゲストコーチには2006年トリノ五輪銀メダリストのステファン・ランビエールや羽生結弦(ANA)のジャンプコーチであるジスラン・ブリアンが就くなど、大きなプロジェクトとして話題を集めている。選ばれた選手は将来が期待される18人。
その中に本田ルーカス剛史(綾羽高校3年)も名を連ねた。

 本田は木下アカデミーに拠点を移して約8ヶ月後の2020年11月に、悲願だった全日本ジュニアの優勝を達成。さらにGPシリーズのNHK杯国際フィギュアスケート競技大会に初出場で3位という好成績を残した。一気に日本のトップスケーターの仲間入りを果たした本田に、まずは木下アカデミーへ拠点を移した経緯を聞いてみた。

Q.2020年4月から木下アカデミーの所属ですが、どのような経緯があったのでしょうか?

「濱田コーチには、2019年4月から関西大学で指導をしていただいていました。その縁もあって、濱田コーチが木下アカデミーで教えることが決まった際に声をかけていただきました。ある程度の成績を残している選手が入れるということだったので、その基準に入っていたことをうれしく思いました」

Q.濱田コーチはどんな方ですか?

「いつも120%の情熱で教えてくれます(笑)。常に新しい練習を取り入れてくれますし、モチベーションを維持しやすいですね。たくさんのトップ選手を育ててこられたコーチですので、試合までのコンディションの持って行き方やケガした時の対処など練習以外の部分も学ばせてもらっています」

Q.ヘッドコーチは長野五輪日本代表の田村岳斗コーチですが、主に何を教えてもらっていますか?

「技術的な指導で、特にジャンプですね。どこに意識すればいいかなどを細かく教えていただき、今までとは違う意識で跳ぶことでトリプルアクセルを習得できました。技術以外にも、練習に取り組む姿勢やトップ選手としての振る舞いなども指導いただいています」

Q.トリプルアクセルに関しては、ショートとフリーの両プログラムで、最初に持ってこられています。その意図は何でしょうか?

「自分が習得しているジャンプの中で最も点数が高い技ですし、絶対に成功させたい。最初に持って来た方がジャンプに集中しやすいからです。まだ簡単に跳べるジャンプではないですからね。単純に最も跳びたいジャンプだから最初に持ってきているというのもあります(笑)」

Q.今シーズンはトリプルアクセルの習得によって結果も付いてきました。中でも昨年11月の全日本ジュニア初優勝は大きな転機だったのではないでしょうか?

「ノービス(小学生)の頃から全国大会でのタイトルをずっと目指してきました。でも、今まで達成できておらず、全日本ジュニアでも自分が優勝するイメージができていませんでした。その中で、1日目のショートで1位になり、2日目のフリーを迎えました。未知の経験でしたし、すごく緊張しました。濱田コーチからは〝顔が青いよ〞って言われるくらい(笑)。それもあってフリーはあまりいい演技ができなかったのですが、それでも優勝できた。これからのスケート人生の中で、一つの自信になる出来事だと思います」

Q.優勝後の涙には、どんな意味があったのでしょうか?

「ジャンプなどの技術的な部分で、今まで苦労してきた方だと思います。ずっと試合で決め切る力が無くて、ノービス時代も合わせて全日本の大会に9回ほど出場していますが、表彰台に上がれたのも2019年の全日本ジュニアが初めてで…。届きそうで届かない。そういう悔しい想いがあったから、うれしくて涙が溢れてきました」

Q.やっと優勝できたと…?

「そうですね。スケートを続けるのは決して安いものではないですし、両親にも苦労をかけていると思います。やっと結果を見せることができ、少しは恩返しができたのかなとも思います」

大舞台で得たものとは

Q.全日本ジュニアの4日後にはNHK杯に初出場。そして3位。率直な感想を教えてください。

「全日本ジュニアが直後ということもあって、あまり緊張感はなかったです。せっかく出させていただけるので、会場の雰囲気を楽しもうと思っていました」

Q.滑走は1番目でしたが…。

「1番目ということに対する緊張はなかったですが、自分のすべきことをやらないといけないという意味では緊張はありました。それは、どの大会でも同じです。NHK杯は緊張したというよりも、むしろ久々に観客の前で滑れたうれしさの方が強かったです」

Q.全日本ジュニア、NHK杯、そして12月の全日本選手権と3つの大舞台を駆け抜けましたが、その中で得たものは何でしょうか?
「全日本ジュニアの前に行われた西日本選手権は股関節のケガで棄権しました。ですので、決していい準備をして3つの大会に挑めたわけではありませんでした。その中で、全日本ジュニアは最低限の演技ができて優勝もできたので経験として大きかったと思います。NHK杯では、ほかの選手の演技がよくなかったという理由もありますが、3位に入れる可能性があるということが分かりました。全日本選手権ではケガを負った中での準備の難しさを理解できました。いろいろな経験を得たことが、自分にとっては大きいと思います」

課題は4回転ジャンプの習得

Q.今の課題を教えてください。

「4回転ジャンプの習得です。それが目の前の課題だと思います。フィギュアスケートはジャンプができないと点数が出ない競技ですので、早く習得し、その上で他のジャンプの安定感を上げるのが目標になってくると思います」

Q.4回転ジャンプの手応えは?

「日によって良かったり悪かったりですが、少しずつ形にはなってきています。でも、まだ試行錯誤しながら挑戦している段階です」

Q.4回転ジャンプを習得すれば、プログラム構成も変わりますか?

「ん〜、どうでしょうか(笑)。4回転ジャンプの習得に関係なく、フリーの〝007シリーズ〞は今シーズンで終わりにする予定です。ですので、ジャンプに関わらず来シーズンは違うプログラムで挑むと思います。どんな曲にするかなどは考え中ですし、まだコーチとも相談もできていません(笑)。でも、また違う自分を見せられたらいいなと思いますし、シーズン毎に成長した自分を見せられるように頑張っていきます」

Q.最後になりますが、レイクスサポートアスリートになったことで心境の変化はありますか?

「滋賀のみなさんに支援いただいているので、成績を残さないといけないという責任感が増しました。それがプレッシャーになることもありますが、逆に苦しい時に頑張れる要因の一つにもなっています。これからも応援していただけたら、うれしいですね」

本田ルーカス剛史

木下アカデミー

Profile/ほんだ・るーかす・つよし。2002年9月15日生まれ、大阪府出身。綾羽高校3年。滋賀県立アイスアリーナクラブを経て、2020年4月から京都の木下アカデミー所属。2019-2020シーズンは、全日本フィギュアスケートジュニア選手権 3位、全日本選手権11位。新人賞に選出。2020-2021シーズンは全日本フィギュアスケートジュニア選手権 1位。2020年NHK杯国際フィギュアスケート競技大会 3位。

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